呉服屋の若旦那に恋しました


……よくドラマや漫画で聞くような言葉なのに、志貴が言うと、ずっと重みがあった。

私は、上手く言葉に出来なくて、必死にこくこくと頷いた。

志貴は、そんな私の腕を優しく引いて、私を立たせ、自分の部屋に移動した。

そして、机の上に置いてあった指輪を取った。


「……今度は、拒否するなよ」

「うん」

「もう30回は拒否されたからな」

「はは、ごめん」

「笑いごとじゃないわ」

「はは、そうだよねごめん、はいっ」


私は、指をすっと志貴に差し出した。

志貴が、私の左手を、左手で支えて、右手で指輪を薬指にゆっくりとはめた。

ドキドキした。こんなに幸せを一瞬に凝縮して感じたことは無かった。

感動して、手が震えた。私の指先で輝くそれを、私は顔の高さまで持ってきて、じっくり眺めた。


やっと、志貴との赤い糸が、結ばれた気がした。


「衣都」


名前を呼ばれてすぐ、キスをされた。

私はそれにこたえる様に、志貴の唇を求めた。

志貴が、ゆっくり私の腰に手を回して、しゅるしゅると帯を緩めた。

それから、私を静かに布団に寝かせて、志貴も同じように自分で腰ひもを少し緩めた。

志貴が浴衣を着ている姿は見たことがあったけれど、脱ぐところを見たのは初めてで、私は中学生だったあの時以上に頬が紅潮していくのを感じた。

上半身だけ肌けた志貴を見て、私は思わず顔を両手で覆った。


「こら、手どけなさい」

「やだ無理死ぬ」

「それじゃあキスもできないし胸も触れない」

「ぎゃーやめて!! 言葉にしないで!!」

「お前なあ……」

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