呉服屋の若旦那に恋しました


はあ、と志貴が呆れたようにため息をついたけど、私は顔から手が離せなかった。

今、志貴の顔や体を見たら間違いなく倒れてしまう。

手をむりやり剥がされそうになったが、私は必死に抵抗して視界を妨げた。


そしたら、ちゅっと肩口に志貴の唇が触れた。

私はびっくりして思わず声を出してしまった。


「衣都、もう観念しなさい」

「うう……」

「ていうかもう、俺が限界だから、無理」


―――思わず力が抜けた瞬間に、手を剥がされて、深いキスをされた。

脳の奥の奥まで溶かしてしまうようなキスに、頭がぼうっとした。

顔を隠す役目を失った手を、志貴の背中にギュッとまわした。

そしたらもう、なんだか愛しさが抑えきれなくなってしまって、言葉が溢れた。


「好きだよ、志貴……」


掠れた声でそう言うと、志貴の顔から余裕が消えた。真剣なまなざしになって、“男の人の表情(かお)”になった。

志貴は、背中に回っていた私の腕を外して、私の指を自分の指に絡めて、愛おしそうに私の指先にキスをした。

その一連の流れが、まるで映画のワンシーンみたいで、思わず見惚れた。


……志貴の、口元にある色っぽいほくろが好きだ。

ピアニストのように細く長く美しい指が好きだ。

名前を呼ばれると、胸の中がくすぐったくなるような、甘い声が好きだ。


志貴が私を触る時の、優しい手が、好きだ。


「愛してる、衣都……」

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