呉服屋の若旦那に恋しました

ぽろっとおばあちゃんの口からこぼれた言葉が気になった。

責任感……? 償い……?

私が思わず眉を顰めると、おばあちゃんはハッとしたように口を手で覆った。


「おばあちゃん変なこと言っちゃったわ、ごめんね。じゃあ、静枝さん達にご挨拶してくるわ」

「あ、うん! 気を付けてね!」

「ありがとう、衣都ちゃんも元気で」

「うん、藍ちゃんに宜しくね!」


そう言って店を後にしたおばあちゃんを見送った。

おばあちゃんは、最後の方明らかに少し焦ったように帰って行った。

おばあちゃんが去っても、残された2つの言葉が胸の中をざわつかせた。





胸騒ぎがする。

私は、その1日なんだか妙に落ち着かなかった。

仕事を終えてやっと着物を脱いで部屋着に着替えても、その胸騒ぎが静まることは無かった。

責任感、償い。

私は、志貴に嘘をついてしまったことで、志貴を縛ってしまったと思っていたけど、もしかして他にも私が彼を縛ってしまっている何かがあるの……?


何だか不安だ。

なんでこういう日に限って志貴はいないのだろう。


志貴に、電話をしてみようかな。

なんだか、なんだか志貴の、声が聞きたい。

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