ラブレター2
『ヤバイ。ハンカチ、忘れた。』

バイトの途中、メールを送っていた。

「いらっしゃいませ~。こんばんは~。」

コンビニの、ダサい制服のポケットの中で、震えている携帯。

監視カメラを気にしながら、死角になっているレジの下で、煙草を詰める作業をしているフリをし、携帯を開く。

受信ボックスのフォルダ名。

あい。

『大丈夫?届けてあげようか?』

それに、直ぐ様、返事を送る。

立ち上がると、お客さんが、レジの前で立っていた。

「あっ、いらっしゃいませ。」

ピッ。と、商品を通して、お金を預かり、お釣りを渡す。

「ありがとうございました。また、お越しくださいませ。」

決められた台詞を、吐いていく。

お客さんが、まだ、ポツポツいたが、入り口付近の駐車場を、チラチラ覗いていた。

万引きされたって、知ったことではない。なんて、カメラを何台も設置してあるのだから、そんな心配なんてしてもいない。

見慣れた車が、駐車場に入ってきたのを確認して、レジの場所で立ちっぱなしに構える。

ドアが開いて、言葉を発さないまま、そこで、女の子を待つ。

「はい。今日、暑いもんね。」

あいの優しさが、ずっと、大好き。

「ありがとう。マジ、助かる。」

今日は、何時まで?迎えに来るから。と言われ、じゃ、またね。と言って、車をレジから見送った。

小学生ではないけれど、あいのハンカチを使っていいのか。と、数分間、考えていたのだが、節約重視の、このコンビニの暑さには、敵わなかった。

『ありがと。ちゃんと、返す。』

そうメールを送り、裏(バックヤード)に戻った。

「彼女、可愛いじゃん。」

ここのオーナー、近所で評判が悪く、女従業員の話しでは、助平(スケベ)らしく、うん。息臭い。

「はぁ。どうも。」

彼女じゃない。と、言うのも、面倒臭かった。

いや、本当に、息も臭かった。

「憎いね~。このこの~。」

年老いているだけあり、肘で、僕を突く行動も古臭く、何より、ムカつく。

飲み物を補充しに行くと、女の先輩がいた。

「へ~。あの子が、噂の三人目?」

「さぁ。貴方より、痩せてるでしょ?」

笑って冗談を言うと、脛(すね)を軽く蹴られた。

「あの子が、一番、好きだけどね。」

缶が、斜めになったローラーを、滑っていく。

「でも、彼氏いるから、好きな…だけかな?」

冷えた缶珈琲を、僕らは、勝手に飲んでいた。
< 36 / 100 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop