ラブレター2
サンタクロースが手を振って、空へ帰った後、すぐに次の年が僕らを待っている。

「ありがとうございました。またお越しくださいませ。」

バイト先のオーナーにバレない様に、溜め息を吐いて、壁に掛けられている時計に、目を向ける。

午後十時五十分くらいを差している。

帰る準備(フェイスアップ)を簡単にして、タイムカードを押しに、バックへ入った。

「悪いけど、もう少しだけ入れない?」

オーナーが、話し掛けてきた。

人の頼みを断れない。と言うよりか、自分の意見を言えない僕。

だけど、今日はチョット…。

「何時までですか?」

深夜交代の人達が、後ろで挨拶をしていた。

「あっ、おはようございます。」

オーナーも煙草の発注をしていて、忙しそうだった。

「できれば、一時までお願いしたい。」

白髪混じりのオーナーが、笑いながら言う。

「いや…。今日は一時までは無理ですね。」

うん、はっきり嫌ですね。

「それなら、何時までならいい?」

店内を見渡す限り、そんなに、忙しくはない。と、思うのだが。

「できたとして、あと三十分。」

「十二時は無理か?」

「すいません。約束があって、本当は十一時までに終わると思っていたので。前以て言われていたら、十二時でも良かったのですが。」

「そっか。なら、十一時半まで頼むよ。」

クソ。と、汚い言葉を閃いた事は、言う間でもない。

このまま、終わる。と思って、馬鹿な頭を一生懸命働かせ、言えた言葉を無視ですか?

「はい。」

雇われている側だし、仕方ない。

「すいません。電話してもいいですか?」

普段、仕事中には、絶対ありえない事。

「時間が伸びた事を、約束している相手に伝えたいんで。」

「そっか。分かった。」

逃げるようにして、隠れるようにして、電話を鳴らす。

「もしもし。」

あいの声が、耳に入ってくる。

「どうかした?」

「あのさ、十一時半に迎えに来てて。」

少しだけ、沈黙が続いたが、

「分かった。」

との返事に、ほっ。と胸を撫で降ろした。

その瞬間、レジに向かえとのサインが出される。

「いらっしゃいませ~、こんばんわ~。」

やる気の無さを丸出しにし、お客さんの商品を、ぴっ。と通す。

「良い、お年を。」

笑ってくれるお客さんに、何度も助けられていた。

「クソ。マジ、ムカつく。」

「今日、どうする?」

シートに背持たれ、車を運転するあいと、目的地を探す旅を始める。

「ってか時間、無いね。早く決めて。」

「ゆうくんが決めてよ。」

あのコンビニから逃げ出して、少し雲掛かる空を見上げ、他愛も無い喧嘩をする。

「仕方無いなぁ。あそこに行って。」

僕が提案したのは、別れ山の、反対側の山。

「分かった。」

車も持たない僕なのに、地理に詳しい事に、あいは疑問を持っていた。

蛇の様な道を、まだ初心者の運転が、器用にこなして行く。

「気を付けろよ。」

「分かってるよ。」

目的地の、近くのコンビニへ到着した。

バックで車を止めたあいに心で拍手。

「まだ時間あるし、何か買おうか?」

うん。と言って、僕はトイレへ、あいは雑誌を読んでいる。

「何買うか決まった?」

「あいもトイレ。」

はいはい。と頭を撫でて、僕も立ち読みをした。

久々の景色が、役にたつなんて。なんてね。

昔、恋していた女の子と、毎日過ごした場所。

その子には、片想いだった。

でも、叶わなかった。

でもさ、あいとなら、大丈夫だよね?

「何買うの?」

ドアが開き、あいがハンカチで手を拭きながら出てくる。

「長すぎ。」

好きだから、冗談も言えると思ってる。

「そんなこと無いも~ん。」

笑って答えてくれる、君に感謝してるよ。

あいが先頭に立ち、その後ろを抱き締めるように店内を歩く。

恥ずかしそうにするあいが、可愛くも思えるけれど、クリスマスの日からか、僕の甘え方を、受け止めてくれる人になってくれた。

「あい、これがいい。」

コーンスープ大好きだもんね。って、

「あつっ!!」

背丈が変わらない二人だからなのか、熱い缶が僕の頬に当たった。

「へへーん。」

先程の言葉への八つ当たりか、間違い無く確信犯がいる。

でもね、何度でも、そんな小さな事に、僕は恋してる。

レジで精算した後、一旦、車に戻る。

「今日さ、寒いって言ったら寒いけど、涼しい感じじゃない?」

柔らかい風。と言っていいのかな?

そんな感じ。

「美味しい。」

おい…。

「…どうせ、最後のコーンまで食べれないくせに。」

笑って言うと、そんなことないもん。との事だったが、結局は…ね。

「よし、外に行こう。」
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