殺戮都市
「斎藤さん!魅せてくださいよ!!」


「そんなクソガキ、一発でノックアウトですよ!」


斎藤が構えて、周りの壁が騒ぎ出す。


どれもこれも、斎藤を応援する声ばかりで、自軍の陣地だと言うのにまるで敵地にいるようだ。


俺は……ここでも敵なのかと、悲しくなった。


「楽には殺さねえぞ!!血ヘドぶちまけろコラ!!」


身を低く、疾風のように詰め寄る斎藤が、その拳を俺の腹部目掛けて打ち付ける。


低いショートアッパー。


だけどそれは、俺の日本刀の刀身が防いだ。


柄をグッと握り締め、左手で刃の背を押さえて。


ガンッという金属音と共に、腕に駆け上がる激しい衝撃。


一発目から、仕留める気で殴って来ているのが分かる。


攻撃が防がれたと判断した斎藤は、すぐさま上体を捻り、左のフックを放つ。


だけどそれは、俺の目の前を横切っただけ。


一撃目の衝撃に合わせて、軽く後方に飛び退いたから回避する事が出来たのだ。


連撃をかわされて、一歩退いた斎藤が、驚いたような表情を浮かべる。


「……ビビって震えてたガキが、まともに動けるようになったかよ?」


でもその顔は……まだ怒りに満ちた笑みを浮かべていた。
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