殺戮都市
俺の想いを、あの恵梨香さんが代弁してくれた。


話したくない言葉だと、気遣ってくれたのだろうか?


この街では、誰もが大切な人を失っている。


それは、この街で知り合った、短い付き合いの人だったかもしれない。


だけど、二人はその辛さを分かってくれているようで、渋々ではあるけれど、葉山の所に行くことを承諾してくれた。


ビルを出て、再びデパートに向かう。


二人はまだ納得出来ていないのか、寂しそうな表情で手を繋いで歩いていた。


デパートに着くと、葉山が入り口まで出て来ていて、俺達を出迎えてくれる。


「こっちの小さいのが亜美、そしてこの生意気そうなのが優だ。まあ、ないとは思うが手を出すんじゃないぞ?お前に頼むのは、二人の保護なんだからな」


葉山に二人を紹介したと思ったら、高圧的な物言いの恵梨香さん。


優の手を握り、その後ろに隠れて葉山を見る亜美。


「そんな事するかよ……ほら、亜美ちゃん。大丈夫だからこっちにおいで」


葉山の……意外な一面が見えた。


その場に屈んで、笑顔で亜美に手を伸ばしているその姿は、どことなく父親の雰囲気を醸し出していたのだ。
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