鎖恋-僕たちクズですー
その日は珍しく真奈と夕飯を食べる。

アパートで2人で夜を過ごすなんて久しぶりだった。

「ゆうくん。できたよ。」

真奈の作った不恰好なオムライス。

「美味しいね。」僕たちは新婚夫婦みたいな微笑ましい夕食の時間を過ごしていた。

真奈は夜のバイトの話が止まらない。

「うんうん。」僕は、もっぱら聞き役になってはいたけど

心のどこかで「はやく切り出さなくっちゃ」って思っていた。

「真奈。もうすぐ年末だね。」唐突に切り出す。

「は?何言ってるの?ゆうくん。」

「い・・いや・・その・・」僕はまごついた。

「一緒に実家に帰らない?」

「え?」真奈の表情は一瞬で濁った。

「一度きちんと家族に話したほうがいいと思う。」

「う・・うん」

こんな説教くさいこと僕は嫌だったけど・・このままじゃいけないんだ。

「あとさ・・ここの住所。どうやって知ったの?おふくろに聞いた?」

「ううん・・。」

ゆうくんの手紙

だまって取った・・・。

真奈はある手紙を出してきた。

封筒には確かに僕の実家宛ての住所。

「まただよ。あの郵便配達のおっさん」

「昔からやるよねー。ゆうくんちとうちの入れ違い」

「はは」(笑) そうだった。

うちと真奈んちは向い同士で

なぜか郵便がよく間違えられる。

「ゆうくんがお母さんに宛てた手紙なんでしょ?」

住所みてビックリだよ。

東京なんて・・。

だからなんかワクワクしちゃってさ。

「だからって黙って持ってたのかよ。」

「うん。ごめん。」

その手紙はそうたいしたことは書いてなかったけど

まさか真奈が持っていたなんて・・なんて女なんだ。

「ダメだぞ」

僕は真奈の手を取り

その手紙を奪い返した。

「ごめん・・・」

真奈はちょっとさみしそうに

僕の手を握り返した。
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