恋の神様はどこにいる?
弁当も食べ終わり少し休憩を取ると、場所を社務所奥の和室に移した。その部屋の壁には大きな鏡が張られていて、さながらダンス教室のよう。
緊張した面持ちで足を踏み入れると、畳のいい匂いが鼻を掠めた。
「小町さん、こっち」
五鈴さんに呼ばれて鏡が張ってある方と反対の方へ行けば、綺麗な装束が掛けてあった。
「これは?」
「巫女舞いを舞うときに着る“あこめ”と呼ばれる本装束。これは例大祭や大きな行事で舞う時に着用するものでね。普段はがこっちの“千早と緋袴”の略装で行われることが多いかな」
二着の装束の素敵さに、うっとりため息を漏らす。
その後も五鈴さんはひとつずつ丁寧に説明をしてくれて。でも巫女舞いのことを何ひとつ知らない私は、ただただ頷くばかり。
「そこからは俺が教える。五鈴は舞いの準備してこいよ」
「もう志貴。急に現れて驚かさないでよ。わかったわ。じゃあ小町さん、またあとでね」
「はい。ありがとうございました」
少し遅れて現れた志貴は、五鈴さんと入れ替わると畳の上に正座をした。
「装束のことはわかったか?」
「大体……かな」
「こっちは額につける前天冠(まえてんがん)。髪は後ろでひとつに束ねて絵元結(えもとゆい)で結ぶ」
志貴はそう言うと、私の髪を少しだけすくい取る。