愛情の鎖
すると、暫くしてピタリと携帯は鳴りやんだ。
それを見計らったように翔太が私を引き寄せる。
「あんな男の所にはやらねーよ」
「翔っ……」
「向こうがその気なら、こっちだって少し強引に動くまでだ。あんな奴に負ける気はしねぇ」
そう言って有無を言わせずトイレの出口に引っ張られた瞬間、私の顔は苦痛に変わる。
そして「やめっ……」と精一杯で抵抗したその時だった。
ダンっ!と目の前に大きな壁が立ちはだかり、聞きなれた低温ボイスが耳に響いた。
「よお、随分と威勢がいいじゃねぇか」
間一髪現れたのは私が思い浮かべていた姿、助けを求めていた人、コウさんだ。
「ここ、女子トイレですよ。隣の男子用と間違えてません?おかまちゃん」
コウさんが堂々と翔太の勢いを止め、彼に向かって鋭く言いはなつ。
「ああ、それともこれがお前の本性か」
「…ちっ……」
コウさんの登場に、翔太の顔が急激に苦味を帯びた表情に変わる。
私は安堵の表情を浮かべ、彼に向かって「コウさ…」と声を漏らす。