妄想世界に屁理屈を。

そんな、死にたくなるような絶望感にあっては、声も出ないだろう。


「てめぇ…」


ミサキくんによく似た低温の声が降りかかる。


「こ、黒庵さん…あんた」


つい、アカネを想い睨んでしまう。

だって、可哀想じゃないか。

いくらなんでもこんな――


「てめぇ、どっかであったか?」


「あったことない!俺は、あんたなんかと…」


「…待って、柚邑。もしかしたら、今の黒庵さまにも多少の記憶はあるのかもしれない。だから、アカネさまが見えているのかもしれない。
そしたら柚邑、あなたもしかしたらアカネさまと勘違いされてるのかもしれないよ」


かもしれない、という推測だけど。

同一視される俺なら、もしかしたら…




「…アカネを、覚えてますか」




アカネを取り戻せるかもしれない。


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