妄想世界に屁理屈を。
ああもう、なんでこんなに理不尽なんだ。
名前を呼ばれる度に主を想って、ただ待って。
いつか現れるのを心待ちにして。
他の神々のスカウトも片っ端から断って。
『吾は、黒庵さまの従者です』、と――
「…柚邑殿。吾にとっては当然にございます。だって吾は、黒庵さまを見て生きるんですから」
これからも。
呪われた従者は、主を見続ける。
「…死なないで。ミサキくん。黒庵さんはきっと治るから。ね?アカネ」
アカネは何も答えなかった。
昨日の残りの砂糖を近くで買った水に入れ、一気に飲み干す。
スズからネックレス(携帯召喚機)を受けとり首にかけた。
「あ、俺の番号。いつでもかけていいよ」
「ありがとうございます」
「じゃあね、また」
「はい。おきをつけて」
無言のスズの手を引いて、池の中へと落ちていく。
最後まで、アカネは何も言わなかった。