妄想世界に屁理屈を。

ああもう、なんでこんなに理不尽なんだ。


名前を呼ばれる度に主を想って、ただ待って。

いつか現れるのを心待ちにして。


他の神々のスカウトも片っ端から断って。


『吾は、黒庵さまの従者です』、と――




「…柚邑殿。吾にとっては当然にございます。だって吾は、黒庵さまを見て生きるんですから」


これからも。

呪われた従者は、主を見続ける。

「…死なないで。ミサキくん。黒庵さんはきっと治るから。ね?アカネ」

アカネは何も答えなかった。


昨日の残りの砂糖を近くで買った水に入れ、一気に飲み干す。


スズからネックレス(携帯召喚機)を受けとり首にかけた。



「あ、俺の番号。いつでもかけていいよ」

「ありがとうございます」

「じゃあね、また」

「はい。おきをつけて」


無言のスズの手を引いて、池の中へと落ちていく。



最後まで、アカネは何も言わなかった。



< 190 / 631 >

この作品をシェア

pagetop