ロスト・クロニクル~後編~
互いの国は敵対しているが、今回は協力を申し出たい――というのが、ルークの本音だろうか。シードは犬猿の仲のルークに手を貸すのは気分的にいいものではないが、だからといってリデルに話したように私情で物事を判断していては親衛隊隊長の地位は勤められない。
ルークは、主人が馬鹿な行動を起こさないように見張りたい。そしてシード達は、シェラの身の安全を図りたい。利害は一致しているので、これに関して断る理由は見付からない。ルークの心情を読んだシードは含み笑いを漏らすと、ミシェルの意思を受け入れるという。
「宜しいのですか?」
「構わない」
「何か、お考えでも?」
「何故、そのように言う」
「隊長が、このように簡単に受け入れるわけがないからです。これに関しては……申し訳ありません」
二人のやり取りを間近で眺めていたエイルが、途中で口を挟む。しかし親衛隊の一員として国の行く末を考えているとはいえ、隊長と副隊長のやり取りに口出しをしていいものではない。出すぎた真似をしたと謝り頭を垂れると、どのような処分を受けると覚悟を決める。
「このようなことで、処分を与えることはしない。寧ろ、自分の意見を言えたことを褒める」
「……有難うございます」
「だが、許されるのはこのような時だけだ。それ以外は、それ相応の処分を行う……いいな」
「心得ておきます」
厳しい意見を言わずとも、真面目のエイルは言葉の通り心得ているだろう。それでも隊長の地位に就き親衛隊を統率していく立場上、部下の不適切な発言に対して注意を行わないといけない。特に、シードの前にいるのは副隊長のリデル。流石に彼女の前で、特別扱いはできない。
シードはフッと息を吐いた後、今回の件は不満があるだろうが素直に受け入れるようにとリデルに命令を下す。勿論、不安感がないわけではない。特にミシェルが絡むと最悪な出来事に発展するのは明白であったが、隊長の命令なので異論を唱えることはできなかった。
だが、大勢でシェラとミシェルの護衛を行なうと、我儘の代名詞であるミシェルが何と言うか。守護者のルーク相手にも散々な言葉を言い放つほどの子供っぽい一面を持つ者なのだから、手を焼くのは間違いない。この点は、ミシェル本人に意見を聞かないと後々で問題になってしまう。