ロスト・クロニクル~後編~

 エイルがシードと会話を続けていると、彼等の態度を遮るかのようにリデルが入室してくる。すると彼女の目に映ったのは、普段と変わらない態度でシードと会話をしているエイルの姿に。そのことにリデルはシードの作戦が成功したことを知り、安堵感を覚えるのだった。

 リデルはエイルに何か言葉を掛けようとするが、寸前でシードの言葉に制されてしまう。どのような用事で、尋ねて来たのか――彼の言葉にリデルは背筋を伸ばすと、ミシェルがシェラを連れ何処かに行こうとしているということを話す。刹那、シードの顔が引き攣りだす。

「それは、本当なのか?」

「事実です」

「全く……余計なことを……」

 それは囁くほどの声音であったので、リデルの耳には届かない。しかし唯一耳に届いたのはエイルで、シードの本音に視線だけ向ける。それでも冷静な一面を崩さないのが、彼の特徴。それでも気分は重いのだろう、嘆息した後、彼女に周囲の護衛は必要なのか尋ねる。

「と、申しますと……」

「あの方は、シェラ様と二人っきりになられることを望まれるだろう。つまり、我々は邪魔者だ」

「いえ、何も申していませんが……」

「それは、誰から聞いた」

 ミシェルがシェラを何処かに連れて行くとリデルに話したのは、一体誰なのか。リデルの話では、それを言ってきたのはミシェルの守護を行っている者。その人物の名前に、冷静な面を取り続けていたシードの眉が動く。同時に、彼からの話ということに変に勘ぐってしまう。

「それなら、あの者も一緒か……」

「確か、隊長とは……」

「そのようなことは、今回はどうでもいいことだ。このようなことに、私情を挟んではいけない」

 親衛隊の隊長として、己が行なわなければいけないことはひとつ。王家の唯一の生き残りであるシェラを守護し、彼女の身に危害が及ばないようにしないといけない。ミシェルはシェラに好意を抱いているので、何かを仕出かすとは考え難いが万が一という場合もある。

 ミシェルの守護者であるルークも、主人の馬鹿な行動を流石に勇めるだろう。この点は信用できるが、ミシェルは時に予想外の行動を取り、ルークさえも頭痛を覚えるほどだ。だから今回は常に目を光らせ、周囲の光景もそうだがそれ以上にミシェルの行動に気を配らないといけない。
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