ロスト・クロニクル~後編~
「いや、構わない。それは事実と認識している。しかし、あの者に期待はしている。この職業は……シェラ様の立場を第一に考えないといけない。だから王家への忠誠が高い者がいい」
「わかっております」
精神が不安定のシェラは、ギリギリの位置で現在の状況を保っている。愛する両親と兄が殺害された時、普通であったら精神だけでなく心そのものが破壊されていただろう。精神を病むだけで済んだのは彼女にとって幸福なのか不幸なのか、それに付いてシードは口をつむぐ。
シードを含め味方側はシェラが回復に向かって欲しいと考えているが、何が切っ掛けとなって回復に向かうかわからない。また、精神を病んだ状態で永遠に過ごさないといけないという最悪の状況を考えると、どのようなかたちであってもシェラを護らないといけない。
「謁見の時、私も同行する」
「宜しいのですか?」
「本来であったら新人隊員だけの謁見になるのだが、状況が状況なので……今回は仕方がない」
「上の者に何を言われるかわかりません。これにより隊長の地位が脅かされては、僕達は……」
「その者達に、言わせていけばいい。シェラ様の体調を考えれば、誰かが側にいなければいけない」
シェラの身体を本当に考えているからこそ、シードは同行を申し出た。真に国の行く末を思う者の意志の強さというべきか、フレイがシードに隊長の地位を譲った理由を間接的に知ることができた。そして彼の決意にエイルは頭を垂れ、国の為に尽くすことを宣言する。
「それを言う相手は、私ではない」
「も、申し訳ありません」
「だが、いい心掛けだ」
「それとこのようなことを言うことは憚られますが、例の公子は……シェラ様にご執心で……」
「それが、頭痛の種になっている。だからこそ、シェラ様の身を護る者は多くなければいけない。まして、現在の状況で結婚など……このようなことを言うべきことではないが、公子ミシェルの印象は……」
精神が安定していない状況での結婚は、相手の都合でどのようにもなってしまう。エルバード公国の公子ミシェルは、好意を抱いている者を手に入れられるのなら何度も行う。現に自身の父親に頼み、シェラの国クローディアを乗っ取ったのだからやり方が卑劣といっていい。