ロスト・クロニクル~後編~
子供っぽいという言葉で片付けられるほど生易しいものではなく、これは馬鹿や阿呆の言葉が似合う。いや、一番の原因は息子の好き勝手の振る舞いに甘い顔をしている父親の存在か。
しかしその読みが正しいものかわからないので、エイルはシードとの話の中にミシェルの父親の言動に付いて話すことはしない。ただ心の中で、ミシェルの父親が自分の父親フレイ同様に厳格な人物だったら互いの国の置かれている立場が違っていたのではないかと思う。
ミシェルの言動が相当重荷になっているのだろう、シードが溜息を付く。普段では考えられない態度にエイルは疲労が蓄積しているのではないかとシードの身を案じるが、彼は頭を振り「問題ない」と、返答する。それでも顔色の悪さは隠し切れず、身体の不調を教えた。
「少し休まれては……」
「いや、そういうわけにはいかない」
「では、副隊長に頼られては……」
「何を言われるか」
「で、ですが……」
このような時、フレイは何と言葉を掛けるのか。エイルはフレイのように立派な人物ではなく、尚且つ自分以上に人生経験が豊富のシードに立派な人物に掛ける言葉が見付からない。
だが、部下の優しさと相手を思う気持ちが伝わってきたのか、シードは微笑を浮かべエイルの気遣いを素直に受け取る。些細なやり取りであっても厳しい一面を忘れないのがシードの特徴で、彼の厳しい言葉にエイルは背筋を伸ばすと、凛とした口調で返事を返していた。
◇◆◇◆◇◆
クローディアの女王シェラとの謁見に、がさつで無礼者のアルフレッドが緊張している。流石、王家への忠誠が人一倍高い人物。女王を目の前にて失礼があってはいけないと、身嗜みを整える。
アルフレッドは相当緊張しているのか、先程から落ち着きがない。一方シンは心臓に毛が生えているのかどっしりと構え、目の前で歩き回るアルフレッドに冷ややかな視線を向けていた。
アルフレッドとシンは、シェラが精神を病んでいることを知らない。知らないからこそ突き付けられる衝撃的な事実に言葉を失い、隊長が謁見に同行した真の意味を知る。そして素直な部下達の反応にシードは目を瞑り、見守るしかできない自分の無力さを呪うのだった。