ロスト・クロニクル~後編~

 彼の両親の問いにエイルはアルフレッドを一瞥した後、淡々と説明していく。現在、自分とアルフレッドは王室親衛隊の一員として王家に仕え、不真面目な点が見受けられるが上手くやっている。また、アルフレッドの体格は王家の壁として隊長と副隊長に期待されていると付け加えた。

「し、親衛隊だと」

「ほ、本当なの?」

「嘘ではありません」

 エイルの説明が信じられないのか、アルフレッドの両親は互いの顔を見合し何か言い合う。言葉の端々に聞こえるのが、何か裏工作したのではないかというもの。息子を信じていない彼の両親の発言にエイルは苦笑し、アルフレッドは両親の発言に間髪いれずに反論していた。

 エイルが嘘を言っているわけではなく、親衛隊の一員として働いているのは間違いない。それに裏工作をして入隊したわけではなく、きちんと試験を受け合格している。そう必死に両親に説明するアルフレッドだが、過去の言動が祟ってか両親はなかなか信じてくれない。

「信用ないんだね」

 彼の両親の言動に、エイルは本音を漏らす。その言葉にアルフレッドは肩を落とすも、自分が親衛隊の一員になったことを両親に信じさせたのだろう、親衛隊の試験に裏工作が使えないことを逆に説明していく。また、隊長と副隊長は不正を嫌う人物なので無理と話す。

 両親に信頼されていないアルフレッドが流石に可哀想になってきたのか、エイルは本当に親衛隊の一員だということを彼の両親に伝えていく。自分の息子の発言は信用できないでいたがエイルの発言は信用できたのだろう、驚きながらも息子が親衛隊の一員だと信じてくれた。

「何故だ」

「信頼できるからだ」

「やっぱり、顔?」

「違う!」

 的外れな発言をする息子に、父親の雷が落下する。自分の息子を顔で判断するほど愚かではなく、ただエイルの方が真面目に見えたからというのが本音だった。しかしその発言もかなり辛辣といっていいもので、エイルが褒め称えるアルフレッドの図太い神経さえも刺激する。

 「剣で身を立てる」と言って旅立った日から何も変わっていない息子に彼の両親は溜息を付くと、エイルに向かい「このような息子と付き合ってくれ、有難うございます」と、礼を言われてしまう。まさか礼を言われるとは思わなかったエイルは、反応に困ってしまう。
< 86 / 223 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop