ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
『手を貸してくれ』と、どこか切なげな表情で懇願したあれは、一体何だったんだ。もう俺は不要だってことか。

そうはいくか。


音を立てないよう静かにドアを閉め、助手席のシートを背中で押しながら目一杯後方へ倒した。

「俺は寝る。何かあったら遠慮なく起こせ」

目を閉じて呟いた。フッと、溜息か失笑か判別できないような声が隣から聞こえた。


初音は左利きだった。

今朝の痴漢騒動を頭の中に思い起こす。腕を掴まれたのも左手、髪を掴まれたのも左手だった。多分、あの女は左利きだ。

もちろん、悦子も左利きである可能性はある。一卵性の双子だからDNAが同じ。ってことは、その可能性の方が高いんじゃないか?

利き手なんかじゃ俺の潔白は証明できないか……。


飽きた。考えることに飽きた。

乃亜、今頃どうしてんのかな。兄貴んとこで丁重に扱われているだろうか。みゆっちが居るから大丈夫だとは思うけど。


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