ロシアンルーレットⅣ【クライムサスペンス】
二人とも押し黙って様子を窺っていると、初音は脇目もふらずこちらに向かってくる。背後から彼女を照らす朝日のせいで、初音の顔は陰になっていて表情がわからない。


「バレたんじゃね?」

俺が声を潜めて言えば、

「別に隠れてたわけじゃねーから」

那智は至極冷静に返してきた。だけど、初音から目を離さないその横顔は、警戒しているように強張っている。


やがて、初音は車のすぐ横まで来て立ち止まった。そして身を屈め、助手席の窓から中を覗き込んだ。

俺たちは目線を合わせないよう、意味もなく前方を見詰め、息まで顰めて固まっていた。


コンコン――

窓が優しくノックされる。仕方がないから、ゆるゆると初音に視線をやる俺たち。

那智が操作したんだろう、助手席のパワーウィンドウがゆっくり下降した。


「おはようございます」

言って穏やかに微笑んだ初音。どうも様子がおかしい。


「おはよう」

那智と二人、声を揃えて挨拶を返す。


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