年下オトコたちの誘惑【完】
「ねっ、ねっ、またやってみてもいい?」
「あぁ、待ってろ」

碧都はそう言うと、わたしが投げたダーツを抜きに行ってくれた。

キャッキャ、騒いで分かった。わたしが子供なんだ。そして碧都が、オトナなんだ。

「ほら」
「う、うん。ありがと…」
「どした?」

急に、よそよそしくなったわたしを不思議に思ったのか、下から覗き込まれた。

「ううん。なんでも、」
「なんでもないわけねぇだろうが。どうした、って聞いてんだ。教えろ」

そんな命令口調にならなくたって…。

「だって…。わたし、子供みたいだなって…。碧都のほうが年下なのに、オトナなんだもん…」
「なんだよ、そんなことか…。驚かせんなよ…」

はぁぁ…と深い溜め息を吐いて、しゃがんでしまった碧都に、わたしも目線を合わせ声をかけた。

「ど、どうしたの碧都…?」

碧都は目だけをわたしに向けると、言った。

「嫌われたのかと思った」
「えっ」

声は小さかったけど、ちゃんとわたしの耳には届いた。

「頼むから、キライにだけはなんなよ…」
「……うん」

そのまま時間が止まったように、わたしたちはただ見つめ合う。

逸らしたいと思うのに、なかなか逸らすことができなくて…。

碧都も同じなのか、逸らすことなく、ただジッと…。
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