年下オトコたちの誘惑【完】
「杏の本心は?」

わたしの肩にアゴをのせて、わたしの言葉を待っててくれてる。

「杏?」

優しい声。怒ると怖いし、顔だってそんな優しい顔はしてないけど、わたしだけに聞かせてくれる声。

「……くない」
「ん、なぁに?もっかい」
「か、帰りたくない。碧都といたい…」

碧都が優しい声出すから…。魔法にかかったみたいに、本音が出てきた。

「それ、マジ?」

クルンと、碧都のほうを向かされ、目の前には碧都の大きくて広い胸。

「もっかい、言って?」
「やだっ」

こんな恥ずかしいこと、そう何度も言えるもんじゃない。

ましてや31にもなれば、こんなセリフ気持ち悪いでしょ。

「えー、聞きたい。なぁ、もっかい。なっ?」

顔を覗かれ催促。オトナだけど、こういう時は、わたしより年下を全面に出してくる。

ズルイ、オトナだ。

「あー、もうっ‼︎言えばいいんでしょ⁉︎帰りたくない‼︎碧都といたい、んっ」

聞きたいと言ったくせに、最後まで聞かない奴。

ふたたびクチビルを奪われ、さっきまで色々と思ってたことが、すべて吹っ飛んだ。

「好き」

クチビルを離すと、耳元で囁いた碧都の『好き』は、かなりの破壊レベル。

「杏が、欲しくてたまんね」

そんなこと言われたら、ほら。もう身体が熱くなる。
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