年下オトコたちの誘惑【完】
「俺も入ってくるわ」
「あ、うん」

スッと、わたしの横を通り過ぎた。その時は目が合うことなく。

バタン‼︎と、ドアが閉まり一人になった広い部屋で、一つ深い息を吐き出した。

「今日も疲れちゃった…」

仕事は慣れたつもりでも、毎日の労働は身体にくる。

いつも誰かがゴハンを作ってくれるから(もちろん自分で作ることもあるけど)家に帰ったら、お風呂に入ったあとは疲れて、そのまま寝てしまうことが多くて。

碧都が上がるまで、と。さっきまで碧都が座ってたソファーに、ゴロンと転がった。

碧都が座ってたソファーは、オトナ二人は寝れるくらいのベッドのようなソファーで。

転がるどころか、寝るのにもじゅうぶんなくらい。

「さっきまで碧都が、ココに座ってたんだ…」

そんな変態チックな言葉を発して、そのまま意識を飛ばした。

「杏、風邪引くぞ」
「……ん」
「寝るなら、ベッド行くか?」
「……ん」
「それとも、ココで襲ってほしいか?」
「……ん」
「はぁ…ダメだな、これ」

なんとなぁく、碧都がわたしに話しかけてるのがわかった。

でも、すごく眠たくて碧都の言葉なんか、聞こえやしない。

「ホント、困ったヤツ。バスローブこんなに、はだけさせて。襲ってくれって言ってるようなもんだろ、こんなん。生殺しだ…」

また碧都の声が聞こえた。なんかよく、わかんないけど。

あ、身体が軽くなった…。なんだろ。宙に浮いてるみたい。
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