極上な恋のその先を。

『渚、ご飯付き合って!』

『へ?』


その顔は、なぜか泣き出しそうで……。
あたしは何も言えなかった。


まるで捨てられた子犬みたいな顔をしていた真山くん。

言われた通り、肩を落として帰って行く。
それを目で追っていると、震える声で百合が呟いた。


『父親はアイツなの。 一度だけ、アイツと寝たんだ。もちろん、中途半端な気持ちでシたわけじゃない。でも……アイツは……』


それ以上は、声が小さくて聞き取れなかった。
ただ、唇を引き結んで泣くのを我慢している百合の肩を、あたしはギュッと抱きしめた。



会計を済ませて病院を後にしたあたし達。
すると、すぐに帰ったはずの真山くんがガードレールにもたれかかるようにして、立っているのが見えた。


あたし達に気付いて、ゆっくりとその顔を上げる。
伏し目がちの瞳。 長いまつ毛が頬に影を落としている。

こんな真山くんの顔……初めて見た。


息を呑んでいると、隣にいたはずの百合が踵を返して走り出した。


『あ、百合……』


あたしが呼び止めるのよりも早く、真山くんが駆け出していた。





そして……。



『待って!』


走り去る彼女の腕を掴み、そのまま勢いよく抱きすくめた。

後ろから覆いかぶさった真山くんは、ギュッと腕に力を込めるようにして言った。



『俺と結婚して! 絶対……絶対幸せにする』

『……』

『百合さんも、お腹の子も……全部俺に守らせて!』



……真山くん……。



『…………なによ、真山のくせに……』




そう言った百合の瞳からは、ポロポロと大粒の涙が零れていて。
あたしはまるで、映画のワンシーンでも見てるように気分になっていた。

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