忠犬ハツ恋
校門を出たところで檜山君は突然立ち止まると振り返って私をぎゅっと抱き締める。

「もう離さねぇ。
誰にも渡さねぇし、お前1人で待たせる事もしねぇ。
だから白石……ついて来い。」

檜山君の瞳は真剣で、それでいて迷いが見えた。

「…行かないよ。
私、大学受験を控えてるの。
今まで必死に勉強して来たのに、コロンビアになんて行くワケないでしょ?」

「………白石…。」

明らかに落胆している檜山君の背中に腕を回しきつく抱き締め返した。

「ちゃんと待ってるから、
だからなるべく急いで夢を叶えて帰って来て。
私が待ちくたびれる前に。
じゃないと本当に凛太郎君と結婚しちゃうからね!」

「………分かった…。
じゃあこれは俺からの婚約指輪。」

檜山君は私の指にエメラルドグリーンの石が輝く清楚な可愛らしい指輪をはめた。

「……これ…?」

「俺の親父が俺のお袋にプレゼントしたやつらしい。親父が白石に渡せってさ。」

「檜山君のお母さんの形見って事?!」

そんな指輪、重過ぎる!

「あまり深く考えるな。ただのリングだ。
気味が悪いなら肌身離さずつけてろなんて言わねぇよ。」

そう言って檜山君は笑う。
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