蝶々、ひらり。
俺の淡いブルーの車の後部座席に、彼女の荷物を詰め込む。
「私、助手席に乗っていいの?」
「いいよ。嫌か?」
「まさか。ありがとう」
彼女は俺に対する警戒心は何もないようだ。
にこりと笑うと、何のためらいもなさそうに助手席におさまる。
俺はそのまま運転席に移り、車を走らせた。
「東京、どうだ?」
「うん。騒がしい」
ぽつりぽつりと、東京の話を聞かせてくれる。
有紀が笑うと俺もつられて笑う。
けれども俺たちは、何一つ肝心な事は聞き合わなかった。
あの時なぜ、連絡が途絶えてしまったのか。
恋人はいるのか。
なぜ急に帰ってきたのか。
久しぶりの有紀とのこの時間は穏やかで温かくて、友人時代だった頃の自分たちに戻ったかのようで。
聞いてしまったら何もかもが壊れてしまうような気がして、俺を再び臆病にさせる。