蝶々、ひらり。
一度バイパス沿いのレストランで食事をとり、再び車に乗り込んだ。
県庁所在地の市内を軽くぐるりと回った後、車は実家のある北東の港町へと向かっている。
大体一時間半ほどかかる、と言ったら有紀は曖昧に笑った。
一時間ほど車を走らせると、やがて話題も尽きたように有紀が静かになる。
俺も何も言えなくなり、カーステレオの音だけが車内に響き始めた。
このまま有紀の実家に帰ってしまったら、今日は何事もなく終わってしまうのだろう。
三年だ。
三年たってようやく訪れた機会だ。
これを逃すようでは、俺は一生ただの臆病もので終わってしまう。
俺は車を走らせた。
目的地は、かつて俺たちが青春を謳歌した場所、懐かしい母校。
「ついたよ」
「ここは……」
校庭では野球部が練習をしていて、金属バットがボールを打つ音が甲高く鳴り響く。
俺たちは裏口の方に回ったが、施錠されていて中には入れなさそうだった。
仕方なしに水色のフェンス越しに校舎を眺める。
「懐かしいね」
有紀の頬が緩む。
制服姿で軽やかにスカートを揺らしていた有紀が、今の有紀に重なった。
ただ好きだと言う気持ちを大切に温めて、いつか殻を破る瞬間を待っていたであろう有紀の恋心。
無理に壊すべきじゃなかったと、何度後悔しただろう。
「ここに、坂上が今勤めているんだ」
「え?」
穏やかだった空気が、凍りついた。