蝶々、ひらり。

「それを返そうと思って来てくれたの?」

「それも、……ある」


ぎこちなく会話が表面を滑り始める。
こんな風に深いところまで入り込まずに、ここまでずっと来てしまった。

今だって、じゃあと言ってこれを返せば、友人関係を保ったまま、終わりにすることは可能だ。

だけど。


「でも……それだけじゃない」


もう変わらなきゃ。
でなきゃ俺達の三年は何の意味も無くなる。


「……私もだよ。ハンカチのために来たんじゃない」


彼女は一度大きく息を吸い込んだ。吹きつける風が、スカートをふくらませては抜けていく。


「諦めるために来たの」


何を?

瞳だけで問いかけると、有紀は涙声で続けた。
茫然と見ていると、その瞳に涙が溜まっていく。


「ずっと自分の気持ちが分からなかったの。失恋のショックから大輔とあんな風になって。私は何をしているんだろうって。
……でも大輔に抱かれるのが嫌だったわけじゃない。ずっと好きだったって言われて、心が動いていたのも事実で」

「ゆう、き?」

「だけど、あの時は分からなかった。
私は本当に大輔を好きなのか。ただ坂上くんを忘れたくて大輔と一緒にいるのか。ずっと分からないまま、ただ一人になるのが怖いとも思ってて。
だから離れてみようと思ったの。それには就職を東京で決めるのが一番いいと思って」

だから、東京だったのか?


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