瞳が映す景色
――小さな頃、兄から、空から降る雨は神様の涙だと教えられた。
冗談のそれを、幼いあたしは真に受け、素直に信じ、雨が降るたび一緒に泣いてた。
世界中に降る涙。その質量に苦しくなり、神様が嘆くことが悲しかった。神様から見る地上が嘆くことばかりだから? 自分がいい子になったら全部救える? いや、自分にそこまでの価値はないけど、幾分かなら、和らげてあげられる?
幼い、けど卑屈で傲慢な感情で、一時ずっと空に語りかけていた、愛しくも恥ずかしい過去。
そういえば、雪には悲しまなかったな。凍っていれば別物と、そりゃ知識がないからそう認識しちゃうか。
クリスマスの夜、チキンやパーティーメニューはとうに完売し、通常の客足はまばらだった午後八時。アスファルトにうっすら積もる、見上げれば際限なく降る雪を見て思い出した。
僅かしか積もってないのに、誰にも踏み荒らされてなかった道路の雪は、足を入れるときゅっと独特の感触が伝わる。閉店作業はとっくに終わらせたけど、あたしの足は止まらない。
そこらへんからかき集めれば、手乗り雪だるまくらいは作れるだろうかとしゃがみこんだ。
「風邪ひいちゃうよ?」
「っ!?」
「って、昼間、僕言ったよね?」
雪積もる道路を気配なく歩いてこられるなんて、この男は妖精か何かか――あたしは振り返りながら可笑しな想像をする。
「……白鳥さんこそ、今日はいつもより薄着。風邪ひいちゃうよ」
「確かに。首元って、やっぱり防寒大切だね~」
妖精や未知なるものって、存在云々は置いておいて、特別に思える。
この世に存在する白鳥さんは、未知云々は置いておいて、今のところ、どうやっても特別だと、その姿を目にするだけで胸が疼いた。