潮にのってきた彼女
穴をくぐった途端、目をつぶってしまったほど太陽の光は眩しかった。
とっくに西へ傾き始めているというのに。


少しして、海面にアクアがぷはっと顔を出した。

砂浜に手をつき、体を陸に持ち上げる。


「大丈夫?」

「うん。慣れてるから」


俺が洞くつの横の岩に座ると、アクアは隣に腰をおろした。


一息ついて、亜麻色の髪を両手で握って水を絞る。
白い指を伝って水が流れていく。

そのまま髪を肩に広げると、残った水の滴が落ちて岩の上にしみを作った。


五円玉ぐらいのしみが7つほどできた時、アクアは口を開いた。


「あのね、わたし、探し物をしているの」

「探し物……」

「わたし、宮中仕えの人魚なんだ。昨日ちょうど流れが変わった潮にのって、この島まで来たの」


宮中と言われ、ぼんやりと浮かんだのは昔見た絵本の竜宮城だった。

泡の向こうに豪奢な建物。金色の柱の周りに、ゆらゆら揺れる羽衣のような海草が植わっている。

宮中から、来た、人魚?


「わたしだけじゃないけれど、この島の近くに同じような人魚が少しいるわ。別行動だけど、目的は一緒」

「探し物、っていうのは」

「真珠、よ」


アクアはいったん目を閉じた。それが再び開かれた時、小さなかげりが見えた気がした。
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