潮にのってきた彼女
「ただの真珠じゃ、ないの……フルフィルパール。『叶える真珠』よ」

「叶える……」

「願い事を叶えてくれるそうなんだけど……長い話、聞いてくれる?」

「もちろん」


アクアの顔を見ながら即答する。

アクアはお礼を言うように微笑みを向け、再び少し俯いて口を開いた。


「何十年か前のこと。国を治めていたのは、若くて美しい、青い目をした男だった。

その男が国王に就任した時には、国は崩壊の一途を辿っていたの。先々代の王がとんでもない男だったから。


ろくに軍備もないまま隣国に戦を仕掛け、借りを作り、それはあまりに酷くて玉座を降りざるを得なかったけれど、時は遅かった。

青い目の王の努力も報われず、国は隣国に併合される寸前になったんだって。



困り果てた臣下のひとりがわらにもすがる思いで、ある占い師に状況を打破する手立てはないかと聞いたの。
占い師は答えを出したわ。


『フルフィルパール。願いを叶える、7つの真珠。
今は首飾りになって、どこかに眠っているね』


苦しい状況に喘ぐひとばかりで、国中がそれを探したわ。
だけど、真珠は見つからなかった。

それは既に、あるひとが保持していたから。
そのひとは、国を治める、青い目の王」


言葉を切り、アクアは指先に海水を絡めた。

青い目の、国王の話。
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