潮にのってきた彼女
自分が何を言うべきかわからずに、黙っていた。

波だけが単調なリズムを刻む。


「……祖父の行いは明るみに出て、国は再建されたけれど、祖父の行いは認められず、シェルラインの家名は歴代の王から消されたわ。


それで、今、王座に初の女王がついてるの。特別に権力の強い家の出だそうで、絶対王政になってるわ。

その女王が玉座についた途端に、忘れられかけていたフルフィルパールの存在を求め始めたの。

おおかた永遠の美貌でも手に入れたいんじゃないかって噂。


女王の命令で例の占い師が王宮へ来て、真珠は陸の上だと告げた。

王がここの辺りへよく来ていたのを発見されていたから、この島に隠されているんじゃないかってことになってるの。


それで、シェルライン家の子孫へ女王からのお達し。
無傷の状態で真珠を女王に献上すること…………だから、ね」


アクアが顔をこちらへ向けた。


「協力して欲しいの。絶対に見つけてなんて言わない。でも、わたしは陸に上がれないから……」


語尾は弱く「陸」よりあとは消え入りそうな声だった。

迷いなんてなかった。


「協力、する。きっと見つける。話、信じるし、全力で探す。だから……」


だから、何だと言うのだろう。
俺に何を言う権利があるのだろう。


「だから……笑ってろよ」


迷った末に口から出たのは、そんな横柄な言葉だった。

言った直後に後悔したが、アクアは嬉しそうに微笑んでくれた。


「ありがとう、しょうご……」


儚い声が、感謝を述べた。
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