潮にのってきた彼女
「それでね」


言ったアクアは、微かにだが笑えていた。


「真珠、7つが連なって首飾りになってるの。役目を終えた6つは輝きを失ってるわ。大きさは、これぐらいかな」


アクアは指で自分の瞳より大きな輪を作った。
すごい。大粒だ。


「それが、誰かの手に?」

「うん……昔のことだから、ひとの手にあるとは限らないけれど。王が人間に預けたって言い伝えはわたしたち子孫だけが知っているから、島に危害が及ぶなんてことはないと思うわ」

「そっか……何十年か前、だもんなあ」


誰かが所有しているとは限らない。それじゃあ、島中からひとつの首飾りを探し出すということになるわけか。

これは、相当な努力が要りそうだ。


「ねえ」


今度は何事かと顔を上げると、アクアは目を輝かせていた。


「あ、ごめんね。考えてくれてたのに。……夕陽、綺麗だったから」


見ると、太陽はかなり傾いていた。

空はうっすらと朱色になっていて水色を侵食し始めている。


「わたし、海もだけど、空も好き。正反対みたいで、だけど海と空は似てると思う」

「水平線だけで、交わってるんだ」

「そうだね。でもそれも見かけだけだから、本当は海と空ってすごく遠くて、いつまでたっても交わらないのね」

「海と空は、近そうで遠い……」


それは、2人で見つけた答えだった。

片方の考えがもう片方のと合わさり、交わる。これは1人じゃ絶対にできないことで、海と空にも絶対にできないことだった。

なんとこの日、俺たちは海と空に不可能なことをやってのけたのだ。

大袈裟だけど、そう言って正しいはずだ。
< 59 / 216 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop