シンデレラを捕まえて
私の手の上に大きな手のひらが乗り、きゅっと包み込んでくれる。
夕日の差しこむ部屋の真ん中で、長い間温もりを交換し続けた。


「ん、ふ……」


抱き寄せられ、腕の中に納まる。キスは次第に、欲望を乗せていった。
私の唇を解放した穂波くんは、耳に唇を寄せた。耳輪を甘く噛み、耳朶に舌を這わせる。服の裾から入り込んだ手が脇腹を優しく撫であげた。


「ん……」


甘い声が漏れる。逞しい躰を抱きしめた。
穂波くんの唇がゆっくりと降りてゆく。首筋まで流れた、そのときだった。ぴくりと動きが止まった。


「穂波、くん?」

「ここ……」


穂波くんが指先を添える。


「キスマーク」

「え!?」


そう言えば、さっきここに比呂にキスされた気がする。痛みを伴ったアレは痕を残していた?


「あ、あの! これは何ていうか、何でもなくて! いや何でもないって言うかコレしかなかったっていうか! これ以上のことは無くって!」


慌てて言う。唖然とした様子の穂波くんは、おでこに手をあてて、大きなため息をついた。


「コレ、かよ……」

「へ!?」

「去り際の栗原さんの捨て台詞! 絶対、コレだ!」


ぷう、と穂波くんは頬を膨らませた。それから、「他には?」と訊いてくる。


「え? え?」

「他には、どこ触れられたの」

「さ、触られてない! 他には触られてないよ!」


思い返して言う。う、うん。大丈夫、確か。
しかし、それは穂波くんを全然安心させなかったらしい。「ダメだ」と彼は呟いた。


「納得できない」

「ご、ごめん」

「全部、俺が触る。栗原さんの名残なんか、一つも残さない」


言うなり、穂波くんはさっきまで指先を置いていた場所に口づけた。すぐに鈍い痛みを感じる。歯を立てられ、肌が粟立った。


「ん……っ」


性急に服を脱がされる。下着だけになった私の躰に、穂波くんは丹念に舌を這わせた。


「や……っ、穂波く……っ」


足先まで愛撫されて、躰が鳴く。今までのものよりも少し乱暴なソレに抗うように声を上げれば「嫉妬してないと思ってる?」と胸元で訊かれた。


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