シンデレラを捕まえて
穂波くんの腕の中で、夜と朝の狭間を漂うのは、心地よい。甘い余韻から抜け出るのを拒むように、微睡に身を預ける。
それでも、いつまでもこうしていられない。カーテンの隙間から零れる光が、タイムリミットが近いことを教える。
ため息を一つついて、腕の中から抜け出した。

晩に、閉店間際のマーケットに飛び込めたので食材はある。いつものように、穂波くんの好きな和食の支度に取り掛かった。


「……おはよ」


油揚げとシメジの味噌汁の味をみていると、穂波くんが起きてきた。大きな欠伸を一つ。


「おはよ。顔洗っておいでよ。ちょうどご飯の支度が出来たから、一緒に食べよ?」

「ん」


頭を掻きながら洗面所に向かおうとしていた穂波くんが、手前に置いていたサイドチェストの前で足を止めた。アクセサリートレイに視線を落とす。


「どうかした?」

「いや、これ」


摘み上げたのは、木製のネックレスだった。


「うん、穂波くんの作ったやつだよ。それが、どうかした?」

「いや……」


目の高さでそれを掲げて、穂波くんは真剣なまなざしで見つめいていた。それは、職人さんの眼差しだ。
少しの間検めるようにそれを見つめていた穂波くんだったが、私の視線に気付くと表情を崩した。


「なんていうか、拙いなー、これ」

「そんなことないよ。すごく可愛いし、私のお気に入りだよ」

「それは、嬉しいけど。さ、それよりメシ食いたい。ちょっと待っててね」


ネックレスをトレイに戻して、穂波くんは洗面所に向かった。
 
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