シンデレラを捕まえて
それから、二人で向かい合って朝食をとった。自分の部屋で、穂波くんと向かい合ってるなんて、ちょっと不思議だ。
穂波くんは私の部屋にある家具が気になるようで、サイドチェストやベッド、テーブルがすごく可愛いとほめてくれた。


「俺の好きなデザインばっかりだ。美羽さんとは好みが近いんだろうな」

「そうかも。穂波くんの家にある家具、どれも私の好みだったもの。いいなって思うのばっかり」

「そっか、じゃあ本当に、好みが似てるんだ。ファブリックも、どれも家具に合ってるし、統一感があってすごくいいと思う。俺、こういうの好きだ」


褒められて、悪い気はしない。えへへ、と笑う。
と、穂波くんがぐるぐると納豆をかき混ぜながら話題を変えた。


「それはそうと。栗原さんのことも落ち着いたし、美羽さんもようやくこの部屋に戻れるね」

「あ……」


味噌汁のお椀を持っていた手が止まる。そうだ、そうだった。


「考えてなかった? それは、嬉しいけど」


くす、と穂波くんが笑う。図星の私は「うう」と口ごもるしかなかった。
しかし、長く穂波くんの家にいるわけにもいかない。
送り迎えをしてくれているだけでも、穂波くんへの負担は大きい。ただでさえ、今は仕事が山ほどあるのだ。少しでも時間が必要な彼の邪魔には、なりたくない。


「えーと、この部屋に戻ります。今日、仕事が終わったら穂波くんの家に行って、荷物をまとめるね」

「そっかあ。寂しいなあ。いっそ、一緒に住んでくれたらいいのに」

「う……」

「なんて、さすがに俺の我儘か。じゃあ、今日はいつものコインパーキングまで迎えに行くね」


そうして、出社支度を整えた私は穂波くんと部屋を後にした。
その日の帰りには穂波くんの家に行き、荷物を纏めて夜の間にアパートに戻った。

送ってくれた穂波くんは、私をぎゅっと抱きしめ、ほっぺたにキスを残して慌ただしく帰って行った。前日、私を探すために仕事を放り投げてしまったため、工程が少しだけ遅れてしまったのだと聞いて、申し訳なさに身を縮ませた。
それでも、彼は去り際に私に言った。


「今度の日曜日、予定開けといて。どうにか時間作るから、どこか出かけよ?」

「いいの? 忙しいんでしょ?」

「まあね、でもこれから頑張るから、平気。だから、待ってて」

「ん」


去ってゆく車を見送りながら、私の心はもう日曜日に向かっていた。その日を思えば、離れてしまう寂しさが少しだけ薄らぐ。穂波くんはきっと、私を寂しがらせないために言ってくれたんだなと思うと、胸の中が温かくなった。
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