シンデレラを捕まえて
コンビニでお菓子と飲み物を買って、のんびりと進む。二時間もすれば、海沿いを走ることができた。水面が太陽の光をキラキラと反射して眩い。


「あ。海水浴してる人が結構いるね。楽しそう」


ビーチには沢山のパラソル。波打ち際には水着で波を楽しんでいる人たちがたくさんいた。

「俺たちも行く?」

「水着ないもん」

「どっかで買えばいいよ。あ、でも足に良くない?」


私の足を見て、穂波くんが言う。


「もう病院に行かなくてもいいし、大丈夫だよ。でも、今日はドライブの方がいいかなあ」

「そう? まあ、俺としても連れて行きたいところがあったから、海水浴はまた今度、かな」

「えー、どこ?」

「それは、秘密」


車はそのまま、賑わう海岸通りを通り過ぎた。


「この先って、何があるの?」

「だから、秘密。まあ、もうすぐ着くから楽しみにしてて」

「えー」


小さな林を突き抜け、住宅地を抜ける。しかし、傍にはずっと海が見えていた。行き先の分からない道行は、ワクワクする。見慣れない景色を眺めるだけで、楽しい。
穂波くんのスウェーデン時代の話を聞いたり、私の大学生活の話をしたりして、車内は会話が途切れることが無かった。

車は、小高い山の中に入って行った。緩やかな勾配の坂を上り、下る。鬱蒼とした木々の隙間をぱっと抜けた瞬間。私は「わぁ」と声を洩らした。

限りなく透明な海が眼前に広がっていた。さっき見た海よりも澄んでいる気がする。その海を二つに分かつように、長く大きな橋が渡る。先には小さな島があった。


「すっごい! なにこれ!」

「綺麗でしょ」


橋を渡る前に、穂波くんは車を手近な駐車場に止めた。


「あっちまで歩いていこ。すっげえ景色いいから」

「うん!」


車から降りて、穂波くんと並んで歩く。と、ふいに、手を取られた。大きな手のひらが、私の手を包む。
驚いて横を見上げれば、にこ、と微笑みかけられた。そのまま顔がそっと近づいてくる。
僅かに触れるだけのキスを交わした。


「行こ?」

「……うん」


頬が思わず赤らむ。繋がれた手をそっと見下ろせば、笑みが零れた。
手を引かれるままに進む。目の前に広がる景色はやっぱり綺麗で、見とれてしまう。


「綺麗だねえ」


遠くに、行き交う船が見えた。その上空を白い鳥が数羽舞っている。頬を撫でる風は海の香りがした。
横にいる人の体温が、私を幸せにさせる。触れ合っている部分が、私の鼓動を早くさせる。


「よし、メシ食いに行こっか。あの島に美味い店あるんだ」


彼の弾んだ声に、頷いて応えた。

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