シンデレラを捕まえて
「高梨美羽といいます。よろしくお願いします」


挨拶をすると巧さんがにか、と笑った。それはどことなく、穂波くんの笑顔に似ていて、親近感がわく。


「おう、よろしく!」

「兄弟子さん、なんですか?」


訊けば、巧さんは頷いた。


「こいつのじいさんが先生なんだ、俺の」


ああ、と納得する。おじいさんは何人ものお弟子さんを抱えていたって話だったっけ。


「あれ? 家具職人さんで、ここのオーナーでもあるんですか?」


首を傾げると、巧さんは「俺は、あんまし家具作りのセンスがなくってさ」と笑った。


「本職にするにはちぃっとばかし才能が足りてなかった」

「巧さんは自分に厳しすぎるんだよ。もうちょっと妥協してもいいと思う」

「馬鹿、そんなこと言うモンじゃねえよ。俺のは、日曜大工・趣味の範囲から出られてねえよ」

「またそんなことを言う。美羽さん、ここの家具は全部、巧さんの作品なんだよ」


穂波くんが、栗のテーブルを指して言った。


「え、そうなんですか! 温かみがあって、すっごく素敵です。このクッションもすごくかわいい」


腰に添えていたクッションを取って言うと、巧さんが嬉しそうに目尻を下げた。


「ああ、それはあれだ、さっちゃんの作ったやつだから」

「さっちゃん?」

「さっき会った女の人だよ。巧さんの奥さんで、幸恵(さちえ)さん。ハンドクラフト作家さんなんだよ。メインに扱ってるのが、リネンなんだ」


ああ、あの可愛らしい女性かと頷く。聞けば、ここは松浦さんご夫妻で経営しているお店なのだそうだ。
巧さんの作った家具と、幸恵さんの作ったリネンの雑貨を使った温かな店を作りたいという夢によってできたのが、この『麺屋気楽』であるらしい。


「わあ。私、そういうのすごくいいなって思います。この店も、雰囲気があったかくって居心地がいいもの」


言うと、巧さんが照れたように頬を掻いて笑った。


「ありがとなー。まあ、ようやく店も軌道に乗って来てさ、今が一番充実してる。と、おっと、穂波。さっちゃんが勝手にオーダー通しちまったけど、よかったか?」

「いつものあれでしょ? 注文するつもりだったから、いいよ。あ、美羽さん。トマト大丈夫だっけ? 勝手に決めちゃっていい? 俺の好きなやつなんだけど、絶対うまいから!」

「うん、大丈夫」


話していると、アルバイトと思しき若い女の子がトレイを抱えてやって来た。


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