シンデレラを捕まえて


藤代さんご夫妻に納品するテーブルに、幸恵さんのドイリー編みのランチョンマットセットをサービスで付けたら奥様が大喜びしたそうだ。


『もっと欲しいんですけどどこで手に入りますかって訊かれてさ。幸恵さんに言ったら快諾してくれたから、紹介した』

「あのセット、すっごく可愛かったもん。お店で使いたくなるの、わかる」


お決まりとなってしまった、夜の電話。お風呂上がりのボディクリームを塗りながら、電話の向こうの声に耳を澄ます。


『うん。それに、お店で使ってくれたらいい宣伝にもなるしね。「気楽」に新規のお客が増えたらいいなって思ってる』


藤代さんご夫妻の仕事は、大詰めと言ったところのようだった。
穂波くんは毎日現場に通い、朝から夜遅くまで制作作業に徹している。作り付けの飾り棚の依頼も追加されたので、その仕事量は多い。
ここ数日は、現場に泊まり込んでいた。


『あ、と。そろそろ仕事に戻るね、遊部さんが戻って来た』

「え? 社長もそこにいるの?」

『うん。なんか手伝ってくれてる。すっげえ助かってる』

「そうなんだ。頑張ってね!」


通話を終えて、ベッドにごろんと寝ころんだ。


「早く、終わらないかなー」


あと十日ほどで落ち着くと言っていたから、それまでの辛抱だ。


「会いたい、なー」


仕事の打ち合わせで、穂波くんは二度ほどユベデザインまでやって来た。けれど、仕事で来ている以上満足な会話はできない。
時間が取れたら会いに来てくれると言っていたけれど、そんな余裕はないようで、会社の外で会うことは無かった。

忙しいから仕方ないよねと思うし、人の夢を叶える仕事をしている穂波くんを尊敬する気持ちもある。藤代さんのお店がどれだけ素敵なものになるんだろうっていう期待もある。

けど、やっぱり本音は寂しい。

一緒に出掛けたあの日から、もう二週間が過ぎようとしていた。さらにこれから十日はこの調子なのだと思うと、気落ちしてしまう。


『いいこに待ってて』


穂波くんの言葉を思い返す。

待ちますよー、待ちます。いいこにだって、してます。だから仕事頑張って。早く会いに来て。

頭の中で応えながら、早く日にちを変えるべく、早々に寝る私だった。
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