シンデレラを捕まえて
「美羽ちゃん!」
カサカサと小さな音を立てる買い物袋を手に歩いていると、ふいに名前を呼ばれた。聞き覚えのある声だけど、と辺りを見渡してみれば、数メートル先に一人の男性が立っていた。
艶めいた綺麗な黒い髪に、黒縁眼鏡。
すらりとした体躯を清潔そうなカッターシャツとジーンズに包んだ、爽やかそうな男性。
太陽の下で会うのは初めてかもしれない。
いつもは調節された光の中でしか出会わない人。GIRASOLのオーナーであるセシルさんが、穏やかな笑みを浮かべて、私に向かって手を振っていた。
「よかった、みつけた」
「え?」
「探してたんだ。この辺りに住んでるってボンヌの子に聞いちゃった」
近寄ってきたセシルさんは、私を見下ろしてにっこりと笑った。
「元気そうだね」
「あ、はい。まあ、元気は元気です、けど」
首を傾げる。セシルさんに探されるように理由はない。
「なにか……ぁぁああ! あ、あの、送別会の事でしょうか!? だ、代金!」
慌ててバッグに手を突っ込んだ。セシルさんの用事といえば、あの晩の食事の代金くらいしか思いつかない。
「違う違う。あれは俺が勝手にやったことだから、気にしないで」
手を振って否定して、セシルさんは「時間ある? どこかで少し話さない?」と言った。
「美羽ちゃんも、話すこととか訊きたいこと、あるでしょ?」
「あ、ええと」
そこでようやくハッとする。訊きたい事は、ある。セシルさんの腕を掴んで「行きましょう」と言った。
カサカサと小さな音を立てる買い物袋を手に歩いていると、ふいに名前を呼ばれた。聞き覚えのある声だけど、と辺りを見渡してみれば、数メートル先に一人の男性が立っていた。
艶めいた綺麗な黒い髪に、黒縁眼鏡。
すらりとした体躯を清潔そうなカッターシャツとジーンズに包んだ、爽やかそうな男性。
太陽の下で会うのは初めてかもしれない。
いつもは調節された光の中でしか出会わない人。GIRASOLのオーナーであるセシルさんが、穏やかな笑みを浮かべて、私に向かって手を振っていた。
「よかった、みつけた」
「え?」
「探してたんだ。この辺りに住んでるってボンヌの子に聞いちゃった」
近寄ってきたセシルさんは、私を見下ろしてにっこりと笑った。
「元気そうだね」
「あ、はい。まあ、元気は元気です、けど」
首を傾げる。セシルさんに探されるように理由はない。
「なにか……ぁぁああ! あ、あの、送別会の事でしょうか!? だ、代金!」
慌ててバッグに手を突っ込んだ。セシルさんの用事といえば、あの晩の食事の代金くらいしか思いつかない。
「違う違う。あれは俺が勝手にやったことだから、気にしないで」
手を振って否定して、セシルさんは「時間ある? どこかで少し話さない?」と言った。
「美羽ちゃんも、話すこととか訊きたいこと、あるでしょ?」
「あ、ええと」
そこでようやくハッとする。訊きたい事は、ある。セシルさんの腕を掴んで「行きましょう」と言った。