シンデレラを捕まえて
みんなに朝のコーヒーを淹れるのが私の朝の日課になっている。
他の人も社長のように美味しいと思ってくれているといいなあ。


「おはよーございまーす」


ドアが開いて、欠伸交じりの声がする。この声は紗瑛さんだ。


「おはようございます、紗瑛さん」

「おはよー、美羽ちゃん」


金のショートヘア。両耳にはピアスをいっぱいつけた、オフホワイトのスーツに身を包んだ女性。意思の強そうなきりっとした吊り気味の瞳が印象的だ。猫を思わせるつんとした雰囲気を持つ彼女は大きな欠伸をした後、うふふと笑った。


「あたしにもコーヒーくれる?」

「はい、すぐに」


ユベデザインのチーフである常盤紗瑛さんは、私より十歳上の三十九歳。だけど、全然そんな風に見えない。くすみのない肌はぷるぷるだし、タイトスカートから見える足は細くしなやかだ。

キッチンで紗瑛さん用のマグカップになみなみとコーヒーを淹れていると、誰かが出社してきた気配がした。
ひょいと事務所に顔を出してみると、ひょろりと背の高い男性がデスクに向かっているところだった。
麻のジャケットに中折帽がしっくり似合っているダンディな人は、経理担当の玉名一郎さん。社長の長年の友人であるらしい。この会社の創業当時から、ここで経理業務についているそうだ。
玉名さんのマグカップも出して、コーヒーの支度をした。


「おはようございます、玉名さん」

「おはよう、高梨さん。ああ、いつもありがとう」

「紗瑛さんもデスクに置いておきますね」

「ありがとねー」


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