シンデレラを捕まえて
事務所は珍しく、全員が揃っていた。紗瑛さんも安達さんもデスクにいた。
「ただいまー、これお土産だよー」
社長が帰り道に買った白玉ぜんざいの入った箱を掲げると、パソコンとにらめっこをしていた紗瑛さんが「うえーい!」と声を上げた。
「休憩しよう、休憩! 美羽ちゃん」
「はい、コーヒー淹れましょうか」
「うえーい!」
「あ、じゃあ俺も手伝うよ」
安達さんが立ち上がってキッチンに向かってくれた。
「宮田くんの工房に行ってきたんだって?」
今日の豆はイタリアンロースト。ミルでがりがりと豆を挽いてくれていた安達さんが訊いてきた。
「作品見た? まだ若いのに、しっかりした仕事するんだよねぇ、彼」
「いくつか見ました! すごく素敵だなと思いました」
「高梨さんはGIRASOLの都築さんの知り合いだったよね。GIRASOLで使ってる家具は全部宮田くんの作品なんだよ。知ってた?」
「ええ、そうなんですか!?」
知らなかった! トレイに白玉ぜんざいを並べる手を止めた。
「カウンターとその後ろの棚も宮田くん作だよ。何日も現場に通い詰めてね」
「ほえー」
店内を思い返す。そっかあ、あれもあれも、あれも、穂波くんの作ったものだったのか。
「おじいさんが有名な木工家でね。昔は何人も弟子を抱えていたような人だったんだ。その人に小さな頃から仕込まれていたって言う話だよ。おじいさん亡き後はスウェーデンに二年ほど修行にも行ってるし、その実力たるや、だよね」
「スウェーデンですか!」
「うん。北欧家具の本場だからね。彼のデザインを見たらわかるけど、けっこうその影響を受けてるんだよ。GIRASOLで使われてる間接照明分かるかな。檜を使った丸みのあるやつなんだけど、あれなんかは顕著だと思うね」
さすが、建築デザイナーさんと言うべきか、安達さんは熱心に細かな説明をしてくれた。それに、木材によって色んな癖があるらしく、穂波くんは木材の長所を伸ばす使い方ができると褒めていた。
「俺はまだ彼と組んだことが無いんだけどね、いつか一緒に仕事してみたいなあって思ってるんだ」
絶対面白いことになる、と安達さんは楽しそうに言った。
すごいなあ、穂波くん。安達さんの眼鏡の奥の瞳が笑っているのを見て、なんだか嬉しくなる。そう言う風に期待されるって、すごくいい。
感心している私を横目に、安達さんは豆を挽き終えてしまった。コーヒードリッパーに粉を落としこんで、「これでいい?」と訊く。
「あ、はい。ありがとうございます」
少しお湯を注いで蒸らす。それから二、三回に分けでお湯を注ぐ。淹れたてのコーヒーを全員分用意して、事務所に戻った。
「ただいまー、これお土産だよー」
社長が帰り道に買った白玉ぜんざいの入った箱を掲げると、パソコンとにらめっこをしていた紗瑛さんが「うえーい!」と声を上げた。
「休憩しよう、休憩! 美羽ちゃん」
「はい、コーヒー淹れましょうか」
「うえーい!」
「あ、じゃあ俺も手伝うよ」
安達さんが立ち上がってキッチンに向かってくれた。
「宮田くんの工房に行ってきたんだって?」
今日の豆はイタリアンロースト。ミルでがりがりと豆を挽いてくれていた安達さんが訊いてきた。
「作品見た? まだ若いのに、しっかりした仕事するんだよねぇ、彼」
「いくつか見ました! すごく素敵だなと思いました」
「高梨さんはGIRASOLの都築さんの知り合いだったよね。GIRASOLで使ってる家具は全部宮田くんの作品なんだよ。知ってた?」
「ええ、そうなんですか!?」
知らなかった! トレイに白玉ぜんざいを並べる手を止めた。
「カウンターとその後ろの棚も宮田くん作だよ。何日も現場に通い詰めてね」
「ほえー」
店内を思い返す。そっかあ、あれもあれも、あれも、穂波くんの作ったものだったのか。
「おじいさんが有名な木工家でね。昔は何人も弟子を抱えていたような人だったんだ。その人に小さな頃から仕込まれていたって言う話だよ。おじいさん亡き後はスウェーデンに二年ほど修行にも行ってるし、その実力たるや、だよね」
「スウェーデンですか!」
「うん。北欧家具の本場だからね。彼のデザインを見たらわかるけど、けっこうその影響を受けてるんだよ。GIRASOLで使われてる間接照明分かるかな。檜を使った丸みのあるやつなんだけど、あれなんかは顕著だと思うね」
さすが、建築デザイナーさんと言うべきか、安達さんは熱心に細かな説明をしてくれた。それに、木材によって色んな癖があるらしく、穂波くんは木材の長所を伸ばす使い方ができると褒めていた。
「俺はまだ彼と組んだことが無いんだけどね、いつか一緒に仕事してみたいなあって思ってるんだ」
絶対面白いことになる、と安達さんは楽しそうに言った。
すごいなあ、穂波くん。安達さんの眼鏡の奥の瞳が笑っているのを見て、なんだか嬉しくなる。そう言う風に期待されるって、すごくいい。
感心している私を横目に、安達さんは豆を挽き終えてしまった。コーヒードリッパーに粉を落としこんで、「これでいい?」と訊く。
「あ、はい。ありがとうございます」
少しお湯を注いで蒸らす。それから二、三回に分けでお湯を注ぐ。淹れたてのコーヒーを全員分用意して、事務所に戻った。