シンデレラを捕まえて
そんな様子を見ていた安達さんは、「えー、宮田くんってそんなタイプだったの、えー」と首をひねりながら帰って行った。


「じゃあ、行こっか、美羽さん」

「あ、うん」


先を歩く穂波くんの後を追った。

穂波くんが向かったお店は、通りから少し外れた場所にある和食のお店だった。
既に予約をしていたらしく、名前を告げると個室に通された。

さほど広くないけれど、和小物の一つ一つが花をモチーフにしたものばかりの上品な部屋だった。

撫子の花が彫り込まれた座椅子に座り、穂波くんと向かい合う。ここに来たことがあるという穂波くんに注文を任せた。


「ごめんね、強引に誘って」


二人きりになると、安達さんと別れてから無口になっていた穂波くんがぽつんと言った。


「どうしたの、急に」

「いや、美羽さん、迷惑だったかなってちょっと反省してる」


穂波くんは私に遠慮がちな視線を向けた。


「俺の事、嫌ってない?」

「え?」

「付け込むような真似したから、あの晩。俺に呆れていなくなったんでしょ。今日、会った瞬間はすげえ嬉しくて、誘わなきゃってそれしか考えてなかったんだけど、さ。やっぱ嫌だったのかなって思って」


しゅんと項垂れた彼の体が酷く小さく見える。叱られるのを待つ子供みたいだと思った。


「そんなこと、ないよ!」


考えるより先に、そう言っていた。


「私の方こそ、あんな風に帰っちゃってごめん。だけど、恥ずかしかったし、どんな顔しておはようって言っていいのかも分かんなかったの。私の方こそ、穂波くんに嫌な思いさせて嫌われちゃったかなって思ってた」

「ほんと?」

「うん。今日会えて、よかったって思ったよ。誘ってもらえて、嬉しい」


ぱあ、と顔つきが明るくなる。「よかった!」と穂波くんがいつもの笑顔を見せたところで、ビールと前菜が運ばれてきた。


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