シンデレラを捕まえて
「――二日間、美味しいご飯をありがとうね、美羽ちゃん。またね」

「はい、また!」


前日と同じように大塚さんの軽トラを見送った。大きく伸びをして、空を見上げる。赤く染まった空には、金星が瞬いている。


「ほんとにありがとね、美羽さん。お蔭で助かった」

「私こそ、見学させてくれてありがと。お風呂入っておいでよ、夕飯の支度してるから」

「ん」


昨日と同じように、家に向かって駆けて行こうとした穂波くんが足を止めた。ふっと振り返る。


「ねえ、美羽さん。そろそろ、栗原さんのことについて話してもいい?」

「え?」

「気持ちが落ち着くまでと思って待ってたんだ。まだメールとか来てるんでしょ? 対応を考えないとさ」


に、と笑う穂波くん。


「あ、ありがと……」

「今、どんな風なの?」

「え、ええと……」


実は、明日会う約束をしています。
もぐもぐと言うと、「はぁ!?」と穂波くんが大きな声を上げた。


「どうしてそうなるの!?」

「あ、いや、その、比呂から少しだけ真面目なメールが来て、それで、その、まともに話が出来そうだから、これならあって話してみてもいいかなと」

「で!? 美羽さんは本当に大丈夫だと思ってるわけ? 会ってどうするの!?」

「ちゃ、ちゃんと踏ん切りをつけようってことで、ヨリを戻すとかそういうつもりは一切ないんだよ? だからその、そこは勘違いしないでほしいんだけど」


穂波くんが余りに怖い顔をするので、俯いて答える。


「大丈夫なように人の多いところで話をするつもりだし、だから、その、心配させないように気を付ける」

「言ってくれなかったら、心配も出来ないでしょ」

「あ、うん、そうなんだ、けど」

「栗原さんが素直に引き下がらなかったらとか、強引にどこか連れていかれたらとか、そういう場合は考えた? 対処できるつもりでいたの?」

「あ、えと。比呂もそこまではしないかな、とか」

「部屋の前で大声出して怯えさせるような人が?」

「う……」


しばしの間があって、どうしたんだろうとそっと瞳を持ち上げて見れば、穂波くんは大きなため息をついた。


「美羽さんってさ」

「はい」

「どうして俺を頼ってくれないんだろうね?」

「え?」

「いつもどこか一歩下がってる。離れてる。ねえ、俺じゃ美羽さんを安心させてあげられない?」


穂波くんが視線を投げてくる。その眉間には深くしわが刻まれていた。


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