シンデレラを捕まえて
そっと侵入してくる舌を迎え入れるとき、躰が震えた。


「ん……」


辺りがゆっくりと薄紫色に染まってゆく。遠くでヒグラシの鳴き声が響いている。縁側に吊るした風鈴がその声に応えるようにチリンと震えた。
汗ばんだ腕が私を絡め取る。抱き寄せられる前に両腕をのばし、背伸びをして、穂波くんの首に回した。
きゅっと力を入れれば、腰にまわった腕がぐいと体を寄せた。
やわやわと噛まれ、吸われる唇から声が漏れる。つ、と穂波くんの唇が離れたかと思えば、それは首筋に降りた。慈しむように啄まれる。


「ん、……ふ……」


頭を抱きしめ、私より少しだけ硬い髪の毛を撫でた。形の良い耳が近くにある。耳を半分ほど隠した髪を指先で掻き上げ、そこに口を寄せた。


「すき」


そっと囁くと、穂波くんの躰がびくんと震えた。


「すき、だよ」


もう一度言う。と、穂波くんが私を勢いよく抱え上げた。突然ぐるんと視界が回り、驚く。


「わああ! な、なに!?」

「ごめん、限界。それ、ズルい」


私を抱え上げた穂波くんは、ずんずんと家の中に入って行った。乱暴に靴を脱ぎ、私の履いていたサンダルを放り投げる。そうして、真っ直ぐに向かうのは穂波くんの部屋。


「ほ、穂波くん!? あ、あの」

初めて入る穂波くんの部屋。木と白を基調としたナチュラルなそこは、綺麗に整頓されていた。
インテリアを十分に観察する余裕もなく、窓辺にある大きなベッドに降ろされる。私が何か言う前に、穂波くんは再び唇で私の口を塞いだ。


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