シンデレラを捕まえて
着いたのは、私のアパートだった。
「店なんかで話すより、こっちで二人きりで話したほうがいい」
ドアを開けるように比呂に促され、躊躇いながら鍵を出す。この部屋に入ってしまえば、外界から遮断されてしまう。
「早くしろって」
比呂が苛立ったように言う。もう、どうしようもない。ため息をついて、鍵を開けた。
しばらく締め切っていた部屋は、空気がよどんでいる気がした。窓を開けて空気を入れ替えようとした私の手を比呂が掴み、無理やり引き寄せる。
腕の中に抱き留められて、私は慌てて身を離そうとする。しかし比呂はそれを許してくれなかった。胸板に顔を押し付けられる形になった。
「な、美羽。もうやり直せない?」
「む、無理だって、何度も言ったじゃない。私はもう、比呂の事を昔みたいに好きでいられない」
「じゃあ、もう一度初めよ? もう一回、好きになってくれよ」
髪に比呂の手が触れる。指先が私の髪を優しく梳く。
昔、こうされるのが好き、と私が言ったことを比呂は覚えていたんだろうか。
「……ごめん。私、好きな人がいる」
「……あいつ?」
頷くと、抱きしめる手に力が籠もった。
「嫌だ」
「ごめ、んなさい」
「嫌だ!」
比呂が叫ぶように言い、そのまま私を押し倒した。
「比、……っ」
唇を乱暴に塞がれる。強引に押し入ってきた舌が私の口中をかき回した。
「ん……っ、や……だっ!」
押し返すも、比呂の力は痛みを感じるほど強くて敵わない。
「やめて! お願……っ、や、やだ……!」
首筋に比呂の唇が落ちる。痛みを覚えるような強いキス。それと同時に、するりと、服の裾から比呂の手が入り込んできた。脇腹からそのまま胸の方へ流れてくる。
咄嗟に思い出すのは、穂波くんの顔だった。
「おねがい、やめて、比呂!」
「拒否するな!」
比呂が声を張った。思わずびくりとする。私の目と、比呂の目がかちんと合った。
「え……?」
真っ赤に充血した比呂の目は、私の視線に気付くとぎゅっと閉じられた。
「拒否すんなよ。お前にまで拒絶されたら、俺……」
比呂が小さく呟いた。その声は弱々しくて、私の胸に置かれた手は少しだけ震えていた。
「ひ、ろ……」
「頼むよ、美羽。傍にいてくれよ。俺の横で支えてくれよ……」
頼む。そう言って、比呂は私の肩口に顔を押し付けた。体が微かに震えているのを感じる。
比呂が、泣いてる。あんなに強くて自信に溢れていた比呂が、私の自慢だった比呂が、弱さをさらけ出して、泣いてる。
弱さを見せることを、何より嫌っていた人だった。どんなに悔しくても、辛くても、それを他人に悟られないように飄々と笑ってみせる人だったのに。
「店なんかで話すより、こっちで二人きりで話したほうがいい」
ドアを開けるように比呂に促され、躊躇いながら鍵を出す。この部屋に入ってしまえば、外界から遮断されてしまう。
「早くしろって」
比呂が苛立ったように言う。もう、どうしようもない。ため息をついて、鍵を開けた。
しばらく締め切っていた部屋は、空気がよどんでいる気がした。窓を開けて空気を入れ替えようとした私の手を比呂が掴み、無理やり引き寄せる。
腕の中に抱き留められて、私は慌てて身を離そうとする。しかし比呂はそれを許してくれなかった。胸板に顔を押し付けられる形になった。
「な、美羽。もうやり直せない?」
「む、無理だって、何度も言ったじゃない。私はもう、比呂の事を昔みたいに好きでいられない」
「じゃあ、もう一度初めよ? もう一回、好きになってくれよ」
髪に比呂の手が触れる。指先が私の髪を優しく梳く。
昔、こうされるのが好き、と私が言ったことを比呂は覚えていたんだろうか。
「……ごめん。私、好きな人がいる」
「……あいつ?」
頷くと、抱きしめる手に力が籠もった。
「嫌だ」
「ごめ、んなさい」
「嫌だ!」
比呂が叫ぶように言い、そのまま私を押し倒した。
「比、……っ」
唇を乱暴に塞がれる。強引に押し入ってきた舌が私の口中をかき回した。
「ん……っ、や……だっ!」
押し返すも、比呂の力は痛みを感じるほど強くて敵わない。
「やめて! お願……っ、や、やだ……!」
首筋に比呂の唇が落ちる。痛みを覚えるような強いキス。それと同時に、するりと、服の裾から比呂の手が入り込んできた。脇腹からそのまま胸の方へ流れてくる。
咄嗟に思い出すのは、穂波くんの顔だった。
「おねがい、やめて、比呂!」
「拒否するな!」
比呂が声を張った。思わずびくりとする。私の目と、比呂の目がかちんと合った。
「え……?」
真っ赤に充血した比呂の目は、私の視線に気付くとぎゅっと閉じられた。
「拒否すんなよ。お前にまで拒絶されたら、俺……」
比呂が小さく呟いた。その声は弱々しくて、私の胸に置かれた手は少しだけ震えていた。
「ひ、ろ……」
「頼むよ、美羽。傍にいてくれよ。俺の横で支えてくれよ……」
頼む。そう言って、比呂は私の肩口に顔を押し付けた。体が微かに震えているのを感じる。
比呂が、泣いてる。あんなに強くて自信に溢れていた比呂が、私の自慢だった比呂が、弱さをさらけ出して、泣いてる。
弱さを見せることを、何より嫌っていた人だった。どんなに悔しくても、辛くても、それを他人に悟られないように飄々と笑ってみせる人だったのに。