MOONLIGHT



「先日の、お話をわかっていただけなかったようですね。何も、本番前に、リカの気持ちを乱すようなことをしなくても…まぁ、今日のことで城田さんの狙いがよくわかりましたけどね。瀬野さんを利用して、まさかベリー・Bに近づこうと考えていたなんて…。」


二重あごを触りながら、水沢の事務所社長が厭らしい顔で笑う。


「はっ!?ちょっと、何言ってるんですか?」


国井さんが、怒りの形相で、社長を睨みつけた。


「うん?君は何だい?」


じろりと国井さんをつけ、頭の先から足の先まで舐めるように見つめた。


「あ、私の研究室を手伝ってくれている、うちの学生です。」


社長の視線が厭らしくて不快に思い、慌てて視線をはずそうと口を開いた。

すると社長は鼻で笑った。


「うちの学生って…ああ、城田さんは、鎌倉学院大学の准教授でしたね…鎌倉学院大学って、あの偏差値で医学部があるんですねぇ…ははは…。いやー、あの大学出身の医者に診てもらうのはちょっと勇気がいるって話ですけど、ははははは…おっと失礼、城田さんも鎌倉学院大学のご卒業ですか?あ、大学時代、モデルされてたんですよねぇ…スーパーのチラシモデル…それが今では、ベリー・Bのモデルですもんねぇ。やはり女は女の武器を使うとちがいますねぇ…。」


体から血の気が引いた。

これは、久しぶりの感覚だ。

多分、お母さんが亡くなった時、私がお父さんの子供と法律で認められていないってわかった時以来の感覚…そう、激しい怒り。

ぶるぶると手が震える。

そして。


下がった体温のまま私は、静かに、社長を見つめた。


社長がブルリと震えた。


「な、何だ君はっ。何か文句があるのか?本当の事を言って何が悪いっ!?」

「悪いです。今のお言葉は偏見で、間違ったことですから。謝ってください。」


自分でもどこからこんなに低い声が出せるんだろうと言う、しわがれた声が出た。


「謝るだと?」


そんなことありえないと言う顔をする社長。


「あたりまえです!城田先生に失礼です!城田先生は、T大首席で卒業された才女です!それに、論文が注目されT大で今、チームを組んで研究をされている、凄い先生なんです!!」


伴君、熱弁をありがとう。


「そうです!俺たちなんか相手にしてもらえない凄い優秀な先生なんです!」


友田君もありがとう。




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