MOONLIGHT


夫人は、脈がない。

フランス人の夫は、フランス語で叫んでいる。

夕真さんが、フランス語でなだめているが言うことを聞かない。


「湯浅君、その人落ち着かせて!!今、蘇生措置とるから大人しくしろ、奥さん助けるの邪魔するな!!って言って!!いろいろ私がやってること説明してやって!!」


私は、フランス人の夫に、その彼は医学生だから彼に質問して、とフランス語で叫んだ。


タイトなスカートが邪魔くさい。

私は少ししか入っていない前斜めスリットを腿の部分まで、引き裂いた。

ストールも床に置いて、袖をまくりあげる。

背中が開いて丸見えなのもこの際、仕方がない。

髪が邪魔なので、シルバーの友田君のネクタイを拝借して髪を後ろで縛る。


マウストゥーマウス。

心臓マッサージ。

繰り返す。


直ぐに息を吹き返した。

心肺停止状態はわずかな時間だったはずだから、多分そんなにダメージはない筈。

医療用語を交えて、フランス語で湯浅君が説明している。


「先生、循環器系の救急でしたら、ここから5分のS総合病院があります。救急車が間もなく2台着きますので、この方はS総合病院に搬送してもらうように頼みます。今、病院の方へ連絡入れますね?」


友田君がパソコンで、病院を調べてくれた。

この夫人の場合一刻も早く、処置することが必要だ。

湯浅君がその旨も、説明した。

フランス人夫が、大きくため息をついた。

救急車のサイレンが近くなってきた。


「先生、S総合病院で刺傷の方も、治療できるそうです。」


電話で、友田君が確認をした。


「ありがとう、じゃあ、それ伴君に伝えて。」


友田君が敏速に、伴君のもとに走った。






救急隊員が駆け付け、事情を話す。


とりあえず、私が夫人に付き添うことになった。

湯浅君がフランス人夫に付き添い、芝崎の車で後追うそうだ。



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