MOONLIGHT
ビールを待っている間に、タバコに火をつけた。
直ぐにビールがやってきた。
浜田がコップに注ごうとしたけれど。
手で制す。
「自分で、注ぎますからいいです。」
「・・・城田先生は、タバコも酒も自分のペースを持ってるんですね?自分のペースが一番旨いんだ?なんとなく・・・わかるな。」
咥えタバコで、ビールを注ぎながら私は頷いた。
「飲みたい、吸いたい、って思った時が一番自分にとって美味しいにきまってるじゃない?他人から、押し付けられるのは嫌いなの。」
チラリと、戸田を見た。
「そう言うことだ。戸田。お前がしたことは、城田先生のご迷惑だったんだぞ?」
「俺は、ただっ…レイちゃんの目が…。」
戸田の言いたいことはわかる。
「戸田さん、私が寂しそうに思えたんでしょ?だから、ずいぶん気にしてかまってくれたんですよね?…だけどね、私はずっとこうやって生きてきたの。それに、お婿さんにもお伝えしましたけど、戸田さんの命を助けたことは、医者として当然のことで、それでお礼を頂くなんて私にしたら、すごく気が重い…はっきり言うと、困る。何度もお礼を言われるたびに、気が重くなって、いたたまれない気持ちだったの。」
私がそう言うと、戸田さんは凄く驚いた顔をした。
「見てみろ、お前の1人よがりだったんだぞ?おまけに、住むところなくて2週間、病院に泊まってたらしいぞ。」
浜田が、戸田さんの頭をひっぱたいた。
「レイちゃん、でも…将君のマンションに住んでたんじゃ…。」
「そうですね、どこもいくところがなくて切羽つまっていて、瀬野将にたよってしまったけれど。青山さんに指摘されて気が付きました。やっぱり、軽はずみでした。離婚して間もないのに、独身の男性の倉庫代わりとはいえ、マンションに転がり込むなんて。」
「いやっ、それは、ちがう…「いえ、私。ずっと、他人に後ろ指をさされないように生きてきたんです。なのに…モラルの問題です。」
ピシャリ、と冷たく言い放つ。
戸田も浜田も、もうそれ以上何も言わなかった。