MOONLIGHT
「まあ、城田先生の勤務事実は調べればわかることです。ここで問題になるのが、婚姻関係を結んでいないのに、2年間彼女をただ働きさせたという、金銭的な問題と、詐欺行為ですね?」
淡々とした口調で、森村さんが話しだした。
「いや…あの…。」
震えだす、オサム。
「ですから、結婚なんてその女に約束なんてしてませんから。いいがかりです。何の証拠があるんですか?戸籍をお見せしましょうか?」
強気な事務長。
確かに、私とオサムの婚姻の事実はなかった。
自分でもあきれてしまうが、瀬野将のマンションに住民票を移す時に、私が結婚も離婚もしていなかった事実に気がついたのだった。
オサムのお父さんの通夜の席で、プロポーズされて。
婚姻届も書いて。
オサムの事でもかげながら色々世話になった神田先輩に報告に行くと、猛反対にあって。
それでも、どうしても結婚するといったら、神田先輩をオサムに会わせて、婚姻届の保証人にしろと条件を出された。
もう、それ以上引かなくて…仕方がなく言う通りにしたのだった。
でも、考えてみると。
届け出とか書類関係は全部オサムの方でするからと、私の手元にはこなかったし。
結婚式もしてなくて。
結婚の事実も秘密。
病院でも、城田で通し。
表には出なかった。
事務長の事もお母さんとはまだ呼ぶな、といわれて。
離婚届も書いたけれど、全てオサムの方で処理すると言われて。
生活も…マンションはかりたけど、一緒に住まなくて…っていうか、私は病院にずっと寝泊りしなくてはいけない状況で…。
オサムと結婚してから、デートも、買い物も、食事にだって出かけたことはなかった。
「は…バカだ、私……。完全に騙されてた…。」
口から出たのは、よわよわしい声。
瀬野将が、立ちあがり、北村さんが座っていた隣にすわった。
私の手を握る。
その手は、震えていた。
「騙してなんか、ないわっ。どこにそんな証拠があるのっ!?」
事務長が、私を怒鳴りつけた。
バンッ――
神田先輩が、机をたたいた。
「…ホント、あの時の俺の行動を褒めたいよ…。オラァッ、ハッタリババァ、証拠だよっ!!」
そう言うと、神田先輩は、2年前の婚姻届のコピーを出した。
そして、黒い細長い録音機…。
スイッチを押すと、オサムが私を幸せにすると言う声が聞こえてきた。