MOONLIGHT



観念したのか、事務長は肩をがっくりと、落とした。

オサムは、一言、ゴメン、と言った。

すると、今まで黙っていた典幸が、オサムに掴みかかった。


「ぁあっ!?ゴメン、ってなんだよっ!?お前、ゴメンでレイの人生狂わせた事、済ますのかよっ!?」


平和主義の典幸が、珍しくぶちギレた。

まずい、こんな根性なしの坊っちゃん社長でも、高校時代、ボクシング部だったんだ。


「典幸、手を離して!あんた、ボクシング部だったでしょ?殴ったら傷害罪だよ!?」


とっさに、怒鳴った。


「傷害罪がなんだよっ!!レイのためなら…「何言ってんの、年食った会長泣かせるの!?」


そう言うと、典幸は一瞬、怯んだ。

その瞬間、素早く青山さんが典幸の背後に回った。

え?

典幸の首に、青山さんの腕が回ってる?


「葉山、暴力では、何も解決しない。帰って不利な状況を導くだけだ。大丈夫だ。ヤられたことは、他の方法できっちり、10倍にして、返すから。まあ、軽く再起不能にはするから。俺たちを誰だと思ってるんだ?」


青山さんのイメージが変わった。

柔らかくて、でも夕真さんが大好きで、夕真さんが絡むと感情的になって、少し子供っぽい人だと思ってたけど。

どす黒いオーラ。

多分、この中で一番、人間性が悪いんじゃないかと思うほどのニヤリ、とした嗤い。

背筋が凍った。


「し、城田さんの、ことは、み、皆さんに関係ないじゃ、ないですかっ!?大体、代々医者のきちんとした家柄の私どものうちに、父親が誰ともわからないような、私生児を嫁にもらうはずはないでしょう?」


開き直りか、苦し紛れなのか、事務長がヒステリックに叫んだ。

その言葉に、典幸の体が震えた。

青山さんに、抑えつけられていてよかった…。

そして、オサムの顔を見る。

その歪んだ顔に、オサムもそう思っていたんだと、少し悲しくなった。


すると、肩に温かい温もりを感じた。

瀬野将が、優しく抱き寄せてくれた。

何だか、その温もりだけで、悲しい気持ちも溶けていくようだった。


と、突然、森村さんが立ち上がった。


「随分な言い方ですね?これは、侮辱罪がプラスになりましたね。」


神田先輩とは別の黒い録音機をポケットから出す、森村さん。


げ、今までのこと録音してたんだ…。


慌てだす、中川親子。



< 58 / 173 >

この作品をシェア

pagetop