MOONLIGHT
観念したのか、事務長は肩をがっくりと、落とした。
オサムは、一言、ゴメン、と言った。
すると、今まで黙っていた典幸が、オサムに掴みかかった。
「ぁあっ!?ゴメン、ってなんだよっ!?お前、ゴメンでレイの人生狂わせた事、済ますのかよっ!?」
平和主義の典幸が、珍しくぶちギレた。
まずい、こんな根性なしの坊っちゃん社長でも、高校時代、ボクシング部だったんだ。
「典幸、手を離して!あんた、ボクシング部だったでしょ?殴ったら傷害罪だよ!?」
とっさに、怒鳴った。
「傷害罪がなんだよっ!!レイのためなら…「何言ってんの、年食った会長泣かせるの!?」
そう言うと、典幸は一瞬、怯んだ。
その瞬間、素早く青山さんが典幸の背後に回った。
え?
典幸の首に、青山さんの腕が回ってる?
「葉山、暴力では、何も解決しない。帰って不利な状況を導くだけだ。大丈夫だ。ヤられたことは、他の方法できっちり、10倍にして、返すから。まあ、軽く再起不能にはするから。俺たちを誰だと思ってるんだ?」
青山さんのイメージが変わった。
柔らかくて、でも夕真さんが大好きで、夕真さんが絡むと感情的になって、少し子供っぽい人だと思ってたけど。
どす黒いオーラ。
多分、この中で一番、人間性が悪いんじゃないかと思うほどのニヤリ、とした嗤い。
背筋が凍った。
「し、城田さんの、ことは、み、皆さんに関係ないじゃ、ないですかっ!?大体、代々医者のきちんとした家柄の私どものうちに、父親が誰ともわからないような、私生児を嫁にもらうはずはないでしょう?」
開き直りか、苦し紛れなのか、事務長がヒステリックに叫んだ。
その言葉に、典幸の体が震えた。
青山さんに、抑えつけられていてよかった…。
そして、オサムの顔を見る。
その歪んだ顔に、オサムもそう思っていたんだと、少し悲しくなった。
すると、肩に温かい温もりを感じた。
瀬野将が、優しく抱き寄せてくれた。
何だか、その温もりだけで、悲しい気持ちも溶けていくようだった。
と、突然、森村さんが立ち上がった。
「随分な言い方ですね?これは、侮辱罪がプラスになりましたね。」
神田先輩とは別の黒い録音機をポケットから出す、森村さん。
げ、今までのこと録音してたんだ…。
慌てだす、中川親子。